なほとか通信 2015 Boss Blog

第七回 白州蒸留所

週末に我が家で開かれる女子会を何とか抜け出そうと考えたぬいたあげく、一人旅に出る計画をたてることになった。許される時間は1日半、せっかくなので少し遠くまで行けるかなぁ?ということで、かねてから行きたかったサントリー白州蒸留所に向かうことにした。


(サントリー白州のHPより)

サントリー白州蒸留所はサントリーの二番目の蒸留所として1973年に山梨県北杜市白州町につくられた。南アルプス甲斐駒ケ岳の山肌に沿うように作られた周囲82万平方メートル、標高700mとウィスキーの蒸留場としては極めて珍しい環境に作られている。澄んだ空気、広大な森の冷涼多湿の気候がゆっくりとゆったりと上質なウィスキーを育んでいる(サントリーHPより)。

そんなわけでそれほど山の中の森の奥までどうやっても行くというのだから大変である。後で書くタクシーの運転手の言葉を借りると「関西からわざわざこんなとこまで来る人なんて本当に好きじゃないとまぁ来ないよねー」ということである。

さて新大阪を3分遅れで出発したひかり470号東京行きは順調に運行し静岡駅に15:32に着く。8分後今度は在来線の特急ふじかわ9号に乗り換えて2時間22分かけて甲府に向かうのである。ぐらっと動き始めた電車はなんと進行方向とは逆に進んでいる。あれっと思っている間に車掌のアナウンスで富士駅まではバックで走行しスイッチバックをして中央本線を進んで行きますということである。びっくりだ。びっくりだと言うとこんな川沿いの崖の様な所にへばりつきながら走る電車もびっくりだがこれほどゆっくりとした特急電車もこれまたと言う感じである。そうこうしている内に甲府へ。今日はここで泊るのである。

甲府の朝はおそろしく寒かったがそれでも足を延ばして甲府城跡に登ったのですっかり体が暖まった。駅前にあった武田信玄公の銅像の顔がなんとも怖い。

JR中央本線長野方面行きの電車に乗って甲府駅から3つ目韮崎駅で降りる。車内からは甲斐駒ケ岳の山肌を下りてくるように山霧が覆っている所が良く見えた。駅前から蒸留所まではバスでと思ったが都会ほど何本も出ていないし、蒸留所までの送迎バスもこの時期は運行していないのでタクシーのお兄ちゃんに交渉をして乗っけてもらう。この人が面白かった。そんな容貌なのだが全く飲めないのだという、「そうなんです僕ゲロなんです」というがそれを言うなら下戸だ。その後30分ほどのタクシーの中で、武田信玄はそんなにこの街には関係ないという話、山梨の若い人は卒業するとすぐに東京に就職するので友達はほとんど残っていないという話、奇妙な絶壁と丸い石で出来た石垣はこのあたりがいわゆる活断層であってそこに川が流れていた頃の証だという話、そして名物はそんなにないという話などをしながら現地に向かう。そして先ほどの言葉だ。さらに「僕に限って言えば蒸留所にお客さんを載せて行った記憶はこれまでに一度もないです」と言われてしまう。そいうものなのか。

都会を出て1時間半ほど走ったところにあるようなゴルフ場と言った感じの所に着いた。さらに肌寒い。

ウィスキーの見学ツアーを12時から申し込んでいた僕は受付で早く着いたことを告げるとそれでは11時の回に廻してもらえるということなので喜んで指定された見学ツアーの待合のある建屋にいた。

暗い室内に集められていたのでどんなメンバーが参加していたのかはわからなかったが、それではツアーの参加者の皆様はこれからまず天然水の取水地に行きますと言うことなので建屋を出た。バスに乗って気がついたのだがこのツアーは子供が大変多かった。

バスは白州工場の中をさらに山側に進んでいき、サントリー南アルプス天然水の取水地とボトリング工場が一緒になっているエリアに進んでいく。そこで南アルプス天然水がいかにして安全で効率よく自然に配慮して生産されているかをスライドやビデオで何度も説明があり、そして工場見学を通じて学んでいく。

山を下りて試飲会場に入って今度は水の成分について利き水をして学ぶ。軟水と硬水の違いによるおいしいご飯の炊き方などを勉強した後、この見学は終了するのである。そうもうお分かりのように僕が望んでいたウィスキーの工場見学はいつの間にか5分前に出発した南アルプス天然水の見学ツアーに紛れ込んでいたせいでおいてけぼりになっていたのである。それに気がついた案内人の彼が大変申し訳ないようだったので、逆に僕の方が恥ずかしくてたまらなかった。というわけで最初から予定していた通り12時の回のウィスキーの見学に参加させていただいた。もっと早く気付くべきだったのだ。ウィスキーの見学に子供連れがわんさかいるわけがないのだ。

気を取り直して今度は本物のウィスキーの工場見学に参加する。

ウィスキーの製造工程の説明を簡単に聞く。もう知っていますねという説明だったが、その後促されて発酵・蒸留棟に入る。おなじみの蒸された麦芽の強烈な臭いに包まれるがいつまでたってもこの臭いには慣れない。ポッドスチルを使った二段式の蒸留施設は山崎蒸留所のそれよりは近代化していてまさに工場といっていい規模である。社員旅行の酔っ払い10名様と家族連れなどを集めた50名ほどの集団はバスに乗って今度は蒸留場中腹の貯蔵施設に向かう。

貯蔵施設の扉が開けられるとそれはもう山崎や余市では見たことがないような近代化した貯蔵施設で、その中にはありとあらゆる年代がかかれた樽が整然と積まれている。きっと見学用に作られたシチュエーションだとは思うが、そこにただよう臭いはすさまじい。香りと呼ぶ方がいいのかもしれないが、樽から漏れ出てくるウィスキーが蒸発して匂っている。今日はいつもより湿度と温度が高いせいか濃度が濃いのだと言う。お酒に弱い方はバスで待っていてくださいという。さすがに僕も倒れそうになりながらバスに乗って試飲会場に戻ってきた。

試飲会場と同じ建屋にはショップがあるがここでも白州12年はおひとり様一本限りである。

白州蒸留所にも山崎蒸留所にあるようなウィスキー館があってウィスキーの歴史が学べる。

お昼を過ぎてから晴れ間が出てきたことで白州蒸留所もどんどん色を増してきている。それに伴って工場見学のツアー客も増えて行き、大盛況である。

お腹もすいてきたことと帰りの韮崎行きのバスの時間があったので、付属のレストランWHITE TERRACEに入った。鶏モモ肉のカチャトーラ ライスコロッケ添えをいただく。これがうまかった。レストランでも白州はもちろん飲めるので白州18年をハーフロックでいただく。1杯で¥1500チャリーンって感じでやりきれないが白州18年は700ml1本で現在では¥20000から¥30000で取引されているのを考えれば良心的である。とりあえずここまで来て飲まないという選択肢は無いのである。何よりもそのおいしさがあたえてくれる幸せの量に圧倒されながら幸せに包まれるのである。

バス停まで歩く帰り道、振り返るとまだ雪のかぶった甲斐駒ケ岳が見える。なだらかな坂道を降りて行きながら、またここに来ることになるのだろうなと思ったのである。どんなことも人から聞くだけの知識では計り知れる事はすくないのだが、この経験を語ることもそんなにないのかなと思うのである。どんなTV番組でもそうであるように帰りの道のりの記録は一切放送されないが帰りもきっちり5時間某の時間を費やして大阪に戻るのである。ほとほと疲れた休日になってしまった。

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