なほとか通信 2015 Boss Blog

第十二回 「舟越 桂」

舟越桂の大規模な巡回展が始まっている。展覧会「舟越桂 私の中のスフィンクス」は兵庫県立美術館で2015年6月27日(土)から8月30日(日)まで開催されている。ちょうど向かったのが梅雨時の平日の夕方であったため、比較的人も少なく時間をかけてみる事が出来た。木彫の展覧会を見る事が初めての経験だったので、楠に施された彫跡や舟越独特の着色の筆跡までもが目の前に、触れるほど近くに展示されている風景はまさに圧巻と言うしかない。舟越桂のドキュメンタリー「≒舟越桂」(2006年発売のDVD)を見ると、舟越がどのように作品の着想を得ていかにして彫刻を作り上げるのかが良く分かる。展覧会で作品の展示位置や光の当たり具合などを何度も確認しながら決めていく姿を見ていると、今回の展覧会でもどんな仕掛けが隠されているのだろうかと気になって仕方がない。


「月の振る森」(2012年、メナード美術館蔵)

彫刻の変遷を辿るように年代を追ってカテゴライズされた展示室にはリズミカルに配置された彫刻群やまた対峙的に配された彫刻、ドローイングと彫刻が対になって展示されているものなど、贅沢のかぎりである。第一室に一体だけ展示されている「月の振る森」にまず圧倒されることは間違いない。


この展覧会のために作成された「森のようにひとり」(作家蔵)(右)と、木炭の習作

2か月に1体程度のペースで制作を続けている舟越の最新作「森のようにひとり」では、さらなる対象を手に入れた舟越のはじけるような躍動感が伺える。

何度も大きなムーブメントを自ら起こし続けている舟越桂は人気の作家であることは間違いない。そしてこの機会を見逃してもまた近い間に新しい対象を見つけて僕たちの前に提示してくれるだろうが、今の舟越桂を体験できる機会は今しかないのである。裸婦像を前につったっている自分を他の誰かに見られたくないという思いもよぎるが、それ以上に受け取る事のできる静かな躍動のようなものを気付かされることになるだろう。好き嫌いはともかく興味のある人はぜひとも足を運んで欲しい。開催期間はまだまだ残っている。

画像はすべてArt collectors’inAsiaさんのホームページからお借りしました。
http://www.tomosha.com/asia/6350

会社情報