なほとか通信 2015 Boss Blog

第十四回 「SHUNGA」 春画展

春画を一般公開することに対して様々な意見があることはさておいて、現在の日本そして海外における春画の位置付けはもはや過去のものではないと言っていいだろう。それは10月も終わろうかとしている週末の午後の永青文庫に並ぶ老若男女問わずたくさんの人々を見ても明らかだった。 

JR目白駅を降りるとすぐに学習院大学が見えてくる。閑静で落ち着いた街並みを歩いていると、植え込み越しに学生達の歓声が聞こえて来て懐かしい気分にさせてくれる。会場まではいささか距離があったので気合を入れて歩いたが近づくに連れて人々が集まり始めていることがわかる。ただ正面に着いてみてびっくりした。何だ!この行列は!!果たして入口がどこにあるのかも見えないまま並んでみる事にした。

おおよそ45分ほどかけて渋滞の列は進み最前列までたどり着いたが、20名づつの入場制限であっても館内はおそろしく混んでいた。人の間から顔が出て人を越えて人が見ているような状態である。
「肉筆の名品」「版画の傑作」「豆判の世界」と3フロアーにわけて展示してある春画の中には菱川師宣、鳥居清永、喜多川歌麿、葛飾北斎などの浮世絵の大家の名前が並んでおり、肉筆画、版画、豆判など大小多数の作品が並んでいる。その多くが将軍家や大名などの権力者で名声も富もある階級の人たちによって制作され収集され現在までも大切に保管されているということは実に興味深い。

表現方法が現在のものと違うとはいえ春画が当時の人々の間で性表現の一つとして受け入れられていたということが明確にわかる資料であるとともに、一流の絵師にかかると春画がいわゆるタブーな性表現ではないように思えてしまうのである。来場者の大くが女性だったのにも驚くが、あらゆる世代のカップル達が顔を見合せながら作品を覗き込んでいる姿も見うけられる。

先のロンドン大英博物館で開催された「春画 日本美術のおける性とたしなみ」展の大盛況を受けて、今回日本で初めての開催となる春画展であるが、今後この展覧会の成果がどのように評価されるかはわからない。ここに展示してある多くの春画もまた暗くて静かな倉庫の奥にしまわれてしまうかもしれない。だから興味がある人はぜひ今の内に足を運んでいただきたい。

春画展は12月23日まで、永青文庫への最寄駅(といえども結構遠い)は都営荒川線早稲田駅を降りて神田川沿いに歩いて風情のある秋の東京を味わいながら坂を上って行って欲しいと思います。

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