なほとか通信 2016 Boss Blog

第16回  横浜美術館 BODY PLAY POLITICS

BODY/PLAY/POLITICS-カラダが語りだす。世界の隠された物語-

すぐには何かわからないようなタイトルの展覧会だが、BODY/カラダをキーワードにした展覧会は近年確実に増えている。横浜美術館主任学芸員の木村絵理子さんは取材の中でこう答えている。「民族や宗教に起因する紛争やテロ、あるいは英国のEU離脱やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)といった国家間の関係をめぐるニュースなど、最近の社会的傾向として、個人の問題よりも集団の問題により強い関心が向けられていると感じる。そこで個人/集団としての身体が、社会で演じる役割と政治性をテーマに捉えたいと思った。」(2016.11.17産経ニュースより)

Internet Museumの記事より©Ryuichi Ishikawa
http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=viewphoto&id=871&c=9

ナイジェリア・マレーシア・タイ・ベトナムと日本の計6人のアジアのアーティストによる共同展示になっている。石川竜一が「グッピー」と「小さいおじさん」という二つの作品を展示しているが、その内容が出来るだけわかるように画像を転用させていただきました。
壁一面を使って展示されている小さめの写真と白いチョークで長く真横に書かれた大きめの文字は決して読みやすいように配置されているわけではないが、石川竜一が今伝えるべきと思っている二人の人物の物語をドキュメント形式で伝えている。出来るだけ自分の言葉を使い、途中何度か書き直すたびに白くなった場所をみると作品の制作風景も想像されて面白い展示になっている。独自のファンタジックな世界観の中に生きる「グッピー」と第二次世界大戦時後の沖縄で波乱万丈の人生を送った「小さいおじさん」を追い続けた記録、ルポライターのような記述。

石川竜一は以前インタビューの中で、写真は撮ってみて初めてそこに何が写っているのかを見て作品として残すのであって、もともと意図してファインダーを覗くことはないといっている。自分が撮りたいと思ったものの中に何が撮りたかったのかを発見するのだと読み取れる。だとしたら石川はこの二人の写真に何を見出して、さらには何度も足を運ぶことになったのだろうか?
石川竜一の才能は文章にも発揮されているのでぜひともそちらの方も読んでいただきたい。
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