なほとか通信 2017 Boss Blog

第21回 「長島有里枝 そして ひとつまみの皮肉と、愛を少々。」東京都写真美術館

「長島有里枝」から始まって「愛を少々。」までが個展のタイトルなのだけれど、それだけがあってそれ以上は何もないという風にも感じる。あるとしたらそのタイトルの英訳だろう。

Nagashima Yurie

And
a Pinch of Irony
with a Hint of Love

長島有里枝と言う人はそんな人である。

1993年に家族全員がヌードというポートレイトやコスプレした自身を映したセルフポートレイトを発表し鮮烈なデビューを果たす。2001年「PASTIME PARADISE(マドラ出版)」で第26回木村井兵衛賞を受賞、2010年「背中の記憶(講談社)」でエッセイ賞を受賞する。2010年に発表した写真集「SWISS(赤々舎)」では現在に至るまでかなりの世代で男女を問わず世界的にも圧倒的なファンを得て、重版がされている。

公立美術館で初めて開催される写真展になるが、時代を追っていくように並べられた展示は長島有里枝という一人の写真家を知る上でとても親切でわかりやすい。

シャッターを切る一瞬、数カロリーも消費しない動作ではあるが、その前後にあるバックグラウンドのことをほとんどの人は知ることはないが、こうやってプリントされたたくさんの作品を見て、彼女が書いたいくつかの文章を読んでいると、いかに彼女がそのたった1枚の写真を発表するまでに様々な日常を重ねて、自らの人生を紡ぐように、たくさんの時間を経て形作られたのかが伝わってくる。

ほとんどの作家がそうであるが出来上がった作品がすべてでそれ以外はないのであるが、なおさらそれ以上を知りたいと思うのもまた長島さんの写真なのではないだろうか?

「長島有里枝 そして ひとつまみの皮肉と、愛を少々。」は恵比寿にある東京都写真美術館 2階展示室にて 2017年9月30日(土)-11月26日(日)まで一般¥800
できれば公式カタログ(図録 ¥3150 A4半変形 サンエムカラー印刷) を購入して野中モモ(ライター、翻訳家)さんのテキストを読んでほしい。

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