なほとか通信 2017 Boss Blog

第22回 NISSAN ART AWARD 2017 BankART Studio NYK

隔年で開催されている日産アートアワードも2017年の今年3度目の開催となる。ファイナリスト5名の中に石川竜一の名前があったので何とか最終日に間に合わせてやってきた。

NHKで8月16日に放映された「ハートネット。フィルターの先に-写真家・石川竜一-」では、約1月におよぶ密着取材の中で石川竜一の作品制作の模様とありのままの沖縄での生活を垣間見ることが出来た。妻ちほに石川が語った「俺は石川竜一というフィルターなんだ」と言う言葉には、単にそういう写真家でありたいと願う石川の想いとは別に、今現在石川が置かれている状況をある程度物語っているのかもしれない。石川がこの賞レースの新作展に持って来たものは石川竜一と言うフィルターを通した沖縄の現在の一瞬である。

「home work」と題されたいくつかの壁に分けられた作品群はカテゴリーがあってないように思える。主に目線より下に石川が自宅の中で撮った何気ない風景写真が配置され、その上に沖縄在留米軍の戦闘機や重武装したヘリなどが飛ぶ様子が展示されている。一見すると沖縄特有の問題提起がなされているようにも見えるが、なんとなく賞レース用の写真を撮ってこいと言われたので「宿題」持ってきましたと屈託のない笑顔に幾分かの皮肉を込めて言っているようにも見える。

一群のプリントを見ているとこれまでの展示で見せてきた石川竜一の写真への方法がここに一堂に会しているようで面白い。ほぼまったくと言っていいほど人が写っていない写真ばかりであるが、そこにはある程度ポートレイトをたくさん撮ってきた石川のやり方が施されている。

どんなアート作品も写真もそうだが見る人によってその対象への評価や感想も持ち帰る情報の量も質も明らかに違うのであるが、これほど私的な(まるで押し入れの中に隠しておいた宝箱の中身を見せてもらうような感じ)ものをこれほどの量で見せてつけてくる石川の熱量は無邪気で半端がない。宿題持ってきましたと言って持って来た石川の宿題をおそるおそる見る担任の先生の気分になってみている気分になる。そんな見方で見てみたらまた違った印象に見えたのである。

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