なほとか通信 2017 Boss Blog

第24回 石川竜一写真展「OUTOREMER/群青」アツコバルー

Ryuichi Ishikawa Photo Exhibition OUTREMER
2017.11.11‐12.18 ATSUKOBAROUH

石川竜一の本年最後の写真展「ウルトラメル・群青」が渋谷のアツコバルーで開催されている。

写真展からさかのぼること3年、2014年11月に「ZEOP」と題された展示を石川はこの地で開催している。沖縄で写真を始めていた石川は手伝いをしていた写真家の結崎先生から作家の大竹昭子さんを紹介してもらい、その後大竹さんに後に「adrenamix」「絶景のポリフォニー」という2冊の写真集を出版することになる赤々舎の姫野代表やギャラリストのアツコバルーさんを紹介される。その後しばらくの時間と紆余曲折の末に開催した東京でのいくつかの展示は反響を呼び、後の木村伊兵衛賞の受賞につながっていく。そのあたりのことは「百平衛 No.38号」に詳しい。

それから3年の間に石川に与えられる称賛の声は増え、彼に集まる期待はとても大きな依頼に代わっていった。でも石川は果敢にも挑んで行くのである。そのあたりのことをギャラリーの紹介文は詳しく書いている。

2014年11月にアツコバルーでの個展を終えた石川は、翌年2015年2月、パリに向かった。パリの冬、毛皮の帽子をかぶり大きなカメラを首から下げて2ヶ月の間、北駅にあるスタジオを起点に木村伊兵衛賞の授賞式ギリギリまでパリを撮って歩いた。800枚ほどのショットを見せてくれたのだが、何かまだ本人も私たちも納得できないものがあった。行けるところまで行っていない。残念な感じがあった。
本来の約束は2ヶ月で何とか個展ができるだけのものを撮ってくる、だったが、石川のもう一度行きたい。という願いに我々もかけてみることにした。そして2016年再び12月。彼は今度はパリから出てマルセイユ、コルシカ、リヨンも回った。結果としてやっと満足いくものが撮れたと思う。

有名な作家の横にはかつてパトロンと呼ばれた富豪がいたように、日本近代絵画の側にフェノロサがいたように、アニメーターや小説家にはかならず熱心な担当がいるように、写真家にはいい出版社やギャラリストがいる。そうやってたくさんの送り手の手によってつくられた展示や写真集に触れて、僕たちはたくさんの幸せをいただけていることを感謝して今年のしめくくりにしたいと思う。

アツコバルーの展示はいつも見事だ。大判のタブロイド紙と呼ばれるざらっとした肌触りのプリントが壁に無造作に貼り付けられていて、また天井からもいくつも吊るされている。その間を歩いて抜けていくとまるでフランスのいくつかの町の中を歩いているような雰囲気を味わえるというインスタレーションだ。気に入ったものがあれば現物のタブロイドプリントも格安で買える。早い者勝ちなのでファンは急いで渋谷のアツコバルーまで走るのだ。

今年も一年お付き合いいただいてありがとうございます。なほとか通信2017は以上で終了です。

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