7月22日(金) 祇園祭は夜がいい
祇園祭の宵宵山にお邪魔してきた。今年は6年ぶりに祭りの日程が週末にあたり、比較的晴れの日が続いたりと梅雨空の多い祇園祭には珍しく、人出も3日間で80万人を超えたと言われている。高さ25mを超え重さ8トンほどもある鉾や山を引いて通りを行く姿は、夏の京都の風物詩である。
クライマックスの山鉾巡行は、毎年くじ取らずとして長刀鉾が先頭を務め、その後をくじ取り式で決められた順番に四条烏丸をスタートする。その数32基。途中何度か碁盤の目になった京都の通りを曲がるとき、辻回しと言われる路に敷かれた青竹の上を山や鉾を乗せて回す姿は勇壮な祭りのハイライトだと言えるだろう。

四条通の函谷鉾

夜を迎える綾傘鉾

祇園囃子を奏でる放下鉾
山鉾巡行が昼間の勇壮な祇園祭なら、宵宵山・宵山は駒形提灯に火が入り、コンチキチンと祇園囃子が奏でられ、思い思いに懸けられた絢爛豪華の懸装品の美しさも色を増し、祇園祭りのもう一つの顔を見せてくれる。
それぞれの山や鉾には様々なご利益があるとされ、厄除けのちまきやお守りを始め、てぬぐい・土鈴・のれんなどグッズ販売にも力を入れている。大きな鉾になれば拝観出来るものもあり、ちまきと拝観券をセットで販売するところもある。
祇園祭のちまきにはもちが入っているわけではなく食べられない。主に家の門口に吊るしておき、厄除け・災難除けとして来年のお祭りまで飾られるのである。

鶏鉾のちまきと拝観券

郭巨山のてぬぐい

黒と朱色が美しい黒主山
それでも2006年には黒主山保存会の手で食べられるちまきを作って、販売するという試みも行われたと言う。この黒主山であるが、うちわも手ぬぐいも黒い、黒いところに朱色で黒と書いてあり、なかなかのかぶきものである。しかし起こりは六歌仙の一人大友黒主をモチーフにしているというのだから、つまり楽しんでやってしまえということに尽きるのである。
宵山には行くべき理由がたくさんある。美しいと言うことでは北観音山は目を引く。詳しいことはわからないが当時に超有名どころの絵師や彫師が腕を競い、ベルギーやインド製の極彩色の絨毯がかけられているのである。

鶏鉾を拝観する人達

長刀鉾ののれん

北観音山の懸装品
美しいのは鉾や山だけではない。もともと祇園祭は民衆が作り上げて続けて来た祭りだから、そちらも力が入っている。細い辻の先ではおのおの提灯や番傘を使った飾り付けがなされ、美しさを競い合っている。なかでも代々家に伝わる家宝を祭りの間だけ見せる屏風祭りは気合の入ったものが多く、格子越しに見物客が群がっている。
普段は京都の目抜き通りである四条通や烏丸通は、宵が深まるに連れて人が流れていく川のようになり、その両岸にはひしめく様に夜店が並んでいる。ベルギービールやかち割りワインを売る店があり、唐揚げを売る店があり両方買って食べて胸やけする。

辻の飾り

屏風祭りの様子

夜店が並ぶ四条通の様子
祇園祭は本当に夜がいい。人気のある長刀鉾や月鉾の周りはいつでも人集りであるが、細い通りをすれ違う人を分け入って行き、その先にある様々に飾られた鉾や山を見て、それにかかわる人達の思いを感じて、飲んで食べて祭りを大いに味わうことが出来るのである。親子連れのお父さんが子供に向かって言っている。そしたら蟷螂山を見て、放下鉾見たら帰ろうか。僕達も帰ることにする。

壮麗な月鉾

勇壮な長刀鉾