母屋の思い出
天気のいい日に屋根に布団を干していると、しばらくするとなんとなく気持ちよさそうなのを嗅ぎつけて猫がやって来ることがありました。当時子供の僕も窓をよじ登って屋根に上がり暖かくて気持ちのいい布団にくるまれて猫とよく寝ていたことを思い出します。母屋にやって来ると以前茅葺きだった母屋の天井は高く、土間のままの床を歩いてかまどや炊事場まで行っていたことを覚えています。母屋は夏の昼間でも結構暗くて涼しかったのですが、真夜中に喉が渇いて母屋の電気を点けるとまるでこの世のありとあらゆる虫や小動物やもっと訳のわからない者達が一斉に物影や縁の下に隠れて行く姿を目の当たりにして、子供ながらに見てはいけない物を見てしまったと言う思いがしました。まっくろくろすけを見付けてしまったメイちゃんのように・・。今でももう一度あの頃の暮らしに戻りたいとは思いませんが、それでもあんなふうな暮らしが都会でも出来るような気がして、そんな家をどうやったら建てられるかをずっと探しているような気がします。(常深)