なほとか通信 2015 Boss Blog

第十五回 「淑女録」原芳市

「E・J・ベロックというアメリカの写真家の存在を知った。彼は1910 年代のニューオーリンズの娼婦をたくさん撮影していた 。それを教えてくれた友人から4×5インチのカメラを借りた。そして、前衛舞踏家をスタジオで撮影した。その後、ピンク・サロン嬢、ダンサーを撮影した。 その3人の写真が、『淑女録』の発端だった。半年の間、暗室の壁に3人の写真のベタが並んでいた。暗室に入る度に、その写真を眺めていた。1980年だった。ぼくはまだ、32歳になったばかりだった。-原芳市- POETIC SCAPE HPより

「目黒警察署前でバスを降りて右に曲がってつきあたりの3件目」と案内に書いてあるのを頼りにすでに暗くなっていた中目黒の住宅街を歩いた。灯りのある方へ方へと歩いて行くとわりとすんなり目的地に着いた。だが、入口のガラス扉に張り紙がされており中では何やらトークイベントが開催されているらしい。

写真

ギャラリーPOETIC SCAPEで開催されている「淑女録」原芳市展を見に来た。入り口の張り紙には「本日イベントのため7:30までクローズ」と言うことなので店先にある二人掛けほどのベンチでしばらく待つことにした。ちらりと見えるトークの輪の中心にはどうやら当の本人である原氏の姿が見える。ときどきこんなビッグな偶然に遭遇する。

原芳市という写真家がそれほど僕の人生の何かを変えたというわけではないのだけれど、彼の切り取る人々にはどことなく彼のニヒリズムのようなものが感じられる。うまくは言えないが甘えん坊の女たらしのような湿り気と言うようなものを写真から感じる事が出来る。うまくは言えてない。

しばらくしてトークショーが終わると店主が現れて、「お見えになっていたのはわかっていたのですが、すでに目一杯でどうすることも出来ませんでした」と丁寧なねぎらいを受ける。
勝手に押しかけたのはこちらの方で悪いなと思う。
じゃ何か写真集でも買おうかと思い。ぺらぺらと写真集を片っ端からめくってみたが、やはり「光あるうちに」と「現の闇」の2冊を買うことにした。
実はすでに持っているのですがと話していると原氏が現れて「金持ちだね」と言われる。
サインと握手をしてもらって店を出た。青山1丁目に向かう。

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