なほとか通信 2016 Boss Blog

第5回 「浮世絵から見る海女」 海の博物館

長い間電車に揺られたあとにバスに乗りかえて山道を進んでいく内に自分が車酔いしていることに気が付いた。子供の頃は車酔いがひどくて車に乗るときはいつも飼い犬のように窓を開けて顔を出しながら走った。自分が車を運転するようになってからはずいぶんとそんなことも考えないようになっていたのに、歳をとったのか不覚にも気持ちが悪い。

昨年に引き続き海の博物館にやってきた。2年連続2度目だが一通り見るべきものを見てしまうと1時間ほどでカフェスペースに帰ってきてしまう。バスの時間までは45分ぐらいあるのでコーヒーでも飲んで待っていようかと思った。

「お客さんは建物の方ですかそれとも船の方ですか?」と話しかけられる。気さくに話してくれるこの人は歳の頃なら僕とそんなにかわらないだろうか、二人の子供を持つお母さんだった。話によるとこんな平日の昼間に一人でカメラを抱えてやってくる人は船の形状や歴史を研究している学者の方か、はたまた建物に惹かれてやってくる建築関係の学生さんかしかないのだと言う。納得である。僕は何をしに来たのだろうかと一瞬考えたが毎年来たくなるのだと伝えた。
後で調べてみると海の博物館は内藤廣建築事務所の設計で日本建築学会賞作品賞を受賞している。上下階で構成されている展示室と敷地内に点在する建物が絶妙な高低差で繋がっているところや、船の骨組みを思わす梁型が特徴の展示室の天井なんかはとても魅力的だと思う。

フォトギャラリーでは「済州島の海女」展が開催されている。世界で海女さんが現存するのは日本と韓国だけであるが、しかしながら最近はあわびなどの漁獲量が減ったこともあり両国とも海女の数は減っている。日本の海女さんたちで作る海女振興協議会では2009年以来毎年海女サミットと開催したりしながら交流を深めている。その一つがこの写真展である。

今年は伊勢志摩で先進国首脳会議サミットが開催される。首脳以外にもたくさんの報道関係者や文化関係者が来ることを睨んで、出来るだけ海女という文化を先進国の首相たちに認知してもらってユネスコの世界無形文化遺産への登録をめざす運動を続けている。ここでも特別展「浮世絵から見る海女」展が開催されている。

バスの時間まで結構話し込んでしまったが、たわいもない時間がゆっくりと流れるこの場所にまた来年も来たいと思うのである。

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