なほとか通信 2016 Boss Blog

第13回  センチメンタルな旅 コンプリート・コンタクトシート 荒木経惟

荒木経惟の代表作である写真集「センチメンタルな旅」(1971年自費出版)の中でも特に有名な写真が船にうずくまる妻 陽子のポートレイトだ。
展覧会の冒頭に当時荒木が語った言葉が大きくコンセプチュアルに引き延ばされている。

「これはそこらの嘘写真とはちがいます。このセンチメンタルな旅は私の愛であり 写真家の決心なのです。自分の新婚旅行を撮影したから真実写真だぞ!といっているのではありません。写真家としての出発を愛にし、たまたま私小説からはじまったにすぎないのです。・・・」

「センチメンタルな旅」-1000部限定 特価1000円-と書いてある。現在では残念ながら¥785,800 ちょっと買えないのである。

私小説と語る荒木の撮った新婚旅行中の写真はすべてコンタクトシートとして現在の私たちに白日の下にさらされているのだが、さらされている妻陽子の気持ちは「愛情生活」(荒木陽子著 1985年)に詳しい。たまったもんじゃないということになるだろう。きっと。

今回の展覧会では神保町の小宮山書店の計らいもあって、荒木経惟がこれまでに刊行してきた写真集を実際に見たり、手に取ったり、購入したりしながら、身近に感じることで荒木のたどった写真人生を追いかけていく。

会場となるIMAギャラリーの冊子の中にこう書いてある。(以下、本文のまま)

-荒木の写真集は、一冊一冊、手法も主題も見せ方も異にしつつも、一連の大きな流れの一端として、物語られている。『センチメンタルな旅』(1971年)から続けざまに出版された『続センチメンタルな旅:沖縄』(同年)は、決して陽子との新婚旅行の続きでも、新婚生活の日常でもないが、おそらく荒木がこの一冊に込めた思いは冠の「続」の一字に現れているのだろう。「写真集、続けるぞ!」という固い意思。だから、「『センチメンタルな旅』は今でも続いている、まだ終わっていないんだ」と語る荒木にとっては、どの写真集も「続・続・続・続・・・・・・センチメンタルな旅」に違いない。-

いい解説である。そう思うのである。

当時私家版としてのみ発売されなかった写真集の復刻本として河出書房よりオリジナル本に近い形で発売された写真集がある。45年を経て蘇る、妻陽子との4泊5日の新婚旅行の模様は全108枚。いろんな意味で写真家荒木経惟とその妻陽子の愛を感じることが出来るのではないでしょうか。

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