なほとか通信 2017 Boss Blog

第8回 国立西洋美術館

日本で彫刻を見つけることはそんなに難しいことではないが、ふらっと立ち寄った場所に気に入った彫刻を見つけるとうれしいものである。でもここはそんな半端な感じではない。

ここ国立西洋美術館の前庭にはたくさんのロダンの彫刻が展示されており、ほとんどはフランスから返還された松方コレクションである。内閣総理大臣を務めた松方正義の孫にして川崎造船所初代社長を務めた実業家松方幸次郎がヨーロッパで収集したものであるが、第二次世界大戦の動乱の中でコレクションの多くは接収され多くは散逸、焼失したものもある。今ここに展示されているものは、数奇な運命を経てようやくここにたどり着いたのである。

オーギュスト・ロダン作「地獄の門」。左右にアダムとエヴァを配した高さ5.4m幅3.9mの大作である。彫刻の中央部上段には「考える人」も見える。新装されるパリ装飾美術館の入り口の門扉の制作をフランス政府から依頼されたロダンは1880年に制作に取り掛かった。しかしこの大作が完成することなく、またロダンの生前にブロンズで鋳造されることもなかった。1920年代になって、松方幸次郎の注文によってはじめて石膏原型からブロンズにうつされたと伝えられる。

「ル・コルビジェの建築作品」として2016年フランス政府とともに推薦していた世界文化遺産に本館が登録されたこともあって建物自身も注目を浴びている。外観の静謐さもさることながら、内観の美しさや実用性などを見て回るのもおもしろい。

建物のいたるところからトップライトが差込み、より自然な感覚で絵画や彫刻を鑑賞できるような設計になっている。

早くから写真撮影も可能になったとのことで彫刻や絵画が好きな人にはお勧めな場所であるが、彫刻の展示方法に関してはもっと頑張っていただきたい。美術館にはもっとたくさんの彫刻が眠っていることも考慮するとなおのことである。彫刻に特化した大回顧展でもやらないかなと今からずっと思っている。

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