沢渡朔写真集

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沢渡朔 Hajime Sawatari「hysteric Ten / Sawatari Hajime」Hysteric Glamour、2004年。

沢渡さんは1940年東京生まれ、東京在住の写真家である。中学の修学旅行の際に手に入れた中古のリコーフレックスで写真を撮り始める。日本大学第二高等学校時代は写真部に所属、カメラ雑誌の月例コンテストの常連となる。日本大学芸術学部写真学科に進学後は「カメラ毎日」「女性自身」などに作品を発表し始め、篠山紀信(以下敬称略)と大学の廊下で2人展(1960年)を開催。その頃白石かずこや寺山修司と出会う。大学卒業後は日本デザインセンターに入社(深瀬昌久、高梨豊、有田泰而、横尾忠則と出会う)高梨豊のアシスタントを務めた後、1966年にフリーとなる。その後ファッション写真を撮る一方、イギリスの少女モデル、サマンサ・ゲイツを撮影した「少女アリス」(河出書房新社、1973年)や、イタリア人モデル、ナディア・ガッリィを撮影した「nadia 森の人形館」(毎日新聞社、1973年)などテーマ性の強い作品を発表し注目される。現在も女性ポートレートの分野を中心に幅広く活躍している。1963年日本広告写真家協会(APA)奨励賞受賞、1973年日本写真協会年度賞、1979年講談社出版文化賞写真賞を受賞。主な写真集に「昭和 伊佐山ひろ子」(宝島社、1994年)「なぎさホテル」(SUPER LABO、2015年)、「Rain」(国書刊行会、2016年)等がある。

本書はファッションブランド・ヒステリックグラマーが刊行する写真集シリーズの第10弾として刊行された。ノスタルジックな集合住宅の廃屋を舞台に、官能的なモデル森月未向(ミサキ)と蛸(タコ)が作り出す耽美な世界観が紙面に充満している。独特の色合いを持つ紙にモノクロ写真が映える。クロス装ハードカバー上にプラスティックカバーと充実の造本である。編集制作に綿谷修さんと大田通貴(蒼穹舎)さんが担当、デザインを原耕一さんが務めている。