旅の理由(わけ)

第五話 ラッキースポット、古宇利島。

旅の途中で不意に出会う風景に心が奪われてしまう瞬間がある。それほど期待していなかった場合ほど、心を余計に動かされてしまうものなのだろう。その日は沖縄県本島北部の今帰仁村にある古宇利島という場所に訪れた時のことだった。朝に大阪から移動して那覇に入り、空港からはレンタカーをチャーターして本日の宿がある名護市まで来たが、少し時間があったので明日から仕事でお世話になる現地の視察も兼ねて車を走らせた。簡単な打ち合わせと現場調査を終えると、時間があるのなら島の名所であるハートロックにでも行ってはどう?という現地の方の提案であった。ハートロックとは数年前にある航空会社がやっていた夏のキャンペーンで、某グループが出演するCMの撮影地になったことで一躍人気となった場所で、古宇利島の北側にあるティーヌ浜という場所にあった。それほど大きなビーチではないが、砂浜を歩いたりハート型に見える岩の前で写真を撮ったりと、その日もたくさんの観光客が訪れていた。もともとこの島には古くから沖縄版国生みの神話が残っていることもあり、今でも恋愛のパワースポットである。さあもうそろそろ帰ろうかと車に乗りこみ、西側にハンドルを切った瞬間。我々は今にも海に沈もうとしている南島の夕日を見る事になったのである。