旅の理由(わけ)

第七話 びっくり、バリのお正月。

お正月は出来るだけ家にいて、滅多なことがない限り夜更かしもせず穏やかな年越しを心掛けている。ただしその年は珍しく年をまたぐ日程で、インドネシアのバリ島に行くことになったのである。バリ島の昼間の気温は日本の夏くらいで曇天でも十分に暑い。猿で有名なウルワツ寺院でケチャダンスを見たり、少々物売りに苦労するヌサドゥアビーチで寝転がったり、クタやレギャントのレストランを巡りアートショップで買い物をしたりと十分に楽しんだ。さて今日は日本でいう大晦日。宿泊しているホテルでもカウントダウン・パーティがあるというので早速会場に出かけた。ホテルにはロシアからの観光客が多く、きつめの酒を誰もが飲みひたすら踊っている、明るく楽しい年越しの時間を過ごしたのであった。翌日、ニューイヤー初日は一転びっくりするほどの荒天であった。インドネシアは雨季と乾季があり、雨季にはスコールが降る。でもこの時期にこんなに降ることはまずないと、現地の人もびっくりだった。それでも残り少ない日程をアクティビティーに向かうべくタクシーに乗り込んで見た光景は、大雨でも力強く生きる人々と、なぎ倒された巨大看板の姿だった。ただし帰国するまでの2日間で看板は見事に復旧していたことにはもっとびっくりしたのである。