旅の理由(わけ)

第九話 首里城、城のあるくらし。

今から600年ほど前の1429年、三山(中山、山北、山南)を統一して琉球王朝は成立した。王家の居城として尚巴志(しょうはし)王は、首里城正殿の玉座にて政治を行ったのであろう。当時は室町幕府の時代。御花園天皇の元、足利義教が4代将軍として政治を行っていた。その三十数年後には応仁の乱が起こり、以後世の中は力の時代へと変わり、いつしか世界的な戦争の渦中に日本も向かって行くことになる。首里城は第二次世界大戦時の沖縄戦の最中に4度目の焼失に遭っている。私たちが2009年に沖縄を訪れた時に目にした首里城が姿を現したのは1990年代になってからであるが、みなさんも知っての通り、2019年の10月31日未明の火災により正殿を含む多くの建物と華美な調度品はほとんど焼失してしまった。現在は再建計画も進んでいるとのことである。城のある街に住んでいることはいいことだ。たとえその城が当時のものではなくても、城主がたいして働きをしていなくても、そこに城があるだけで何となく安心する。だからきっと無いとなれば寂しく感じるはずである。城とは紛争時における守りの要であり政治の中枢である。だからこそ平和な時代にこそ無ければいけないのである。先人がいて厳しい時代があったからこそ、平和で繁栄のある現在がある。そう思えるような城があって欲しいと思うのである。