旅の理由(わけ)

第十二話 日曜日は香港島へ、中環に行ってみた。

香港島の中心地である中環(セントラル)あたりに日曜日に出かけると、とんでもない光景を目にすることになる。街のいたるところ公園などの広い場所や、特に屋根がある地下街や連絡橋の上などでは、たくさんの人達であふれかえっている。見ていると皆思い思いの食べ物を持ち寄っているようで、楽しそうにしゃべり会っている者もいれば、何かのゲームで遊んでいる人や、TV電話で誰かと話している人などもいて実に賑わっている。最初は何かのお祭りの日に出くわしたのかと思っていたが、よくよく聞いてみると、ここに集まっているほとんどの人は出稼ぎにきたフィリピン人女性達で、多くが中国人やイギリス人家庭で家政婦をしているとのことであった。香港で暮らすのも中々大変なようで、狭い土地に大量の移民が押し寄せた歴史があり、今でも人口密集がすごい。だから土地の値段がどんどん上がり、必然とマンションはどんどん高層化する。そうやって高いマンションの家賃を稼ぐためには選択肢は子供を持たず共働きをするか、子供をベビーシッターに預けて働きに出るかになる。だから人件費の安く働き者のフィリピン人が重宝される。彼女達は週一日の休みを同郷の人達と楽しく過ごしているのである。