旅の理由(わけ)

第十六話 島時間、沖縄久米島。

那覇空港から琉球エアコミューターというプロペラの付いた小型飛行機に乗り込み約35分、沖縄の離島久米島に着いた。2010年に初めて訪れた久米島は、まだ5月だというのにすでに夏だった。それほど大きな島でもないので、いわゆる観光名所である国指定の天然記念物の「畳岩」(亀の甲羅の形をした岩が並んでいる海岸)や、「比屋定バンタ」と呼ばれる断崖絶壁、象徴的なパワースポット「ミーフガー」などを順番にゆっくり見て廻っても1日あれば十分だった。翌日は天気が良かったので砂浜しかない無人島「ハテの浜」に船で渡してもらってしばし楽園気分を味わった。夜はちょうど時期がよかったので久米島にだけ生息するクメジマホタルを見に行くツアーに参加して、本当の暗闇の中で明滅する、もっと言うと乱舞するホタルに久しぶりにびっくりした。古くから続く酒蔵の友達を訪ねて泡盛を作る工程の一部を見学させてもらって、しばし友達家族と島の夏祭りなどを体験したりしたが、あの時一緒に遊んでくれた子供達はもう高校生と中学生になっている頃だろう。それ以外に何があるというわけではないのだけれど、毎朝ホテルの窓際にやってくる名前もわからない鳥たちのさえずりを聞きながら目を覚ますような、贅沢な島時間にまた浸りたいなとあらためて思うのである。