旅の理由(わけ)

第十八話 伝説の古都、チェンマイ。

伝説の巨石神が地上に現れるシーンでは、決まって地が割れ雷鳴をとどろかせながら登場する。そんなことは現実の世界でまず起こることは無いと確信しているものの、実は心のどこかではいざという時にそんなことが起こってしまってもいいと思っている。同じようなことをタイの古都チェンマイで見かけた涅槃仏に思った。全身に金箔が施された巨大な仏が右手で頭を支えて眠っている姿は、いつの日か混乱の世に精を受け心が生まれ、手を付いて立ち上がるのかも知れないと思わせる。さて妄想はおいておいて、チェンマイの街はもうそろそろ潮時かのように何もかもが古びている。日本でいうと平安から鎌倉時代に隆盛を誇ったチェンマイも、激動の時代を超えてギリギリ持ち堪えて来たのである。チェンマイに行くならバンコクからは鉄道を使って行くことも出来るが、ちょっと上級者向きかもしれない。よほど事前にしっかりと列車のことを調べて行かなければ、その日の内にバンコクに戻れなくなる。かといって一番楽な方法を取ってタクシーに乗れば、何のアトラクションかと思えるような爆 走する運転手に結構な確率で遭遇する。だからしっかり気持ちを強く持てる時に乗車してほしいのである。