10月17日(月) 旧金毘羅大芝居-金丸座を探検!!
香川県仲多度郡琴平町、金毘羅宮の石段が始まろうとするあたりを左に反れて、なだらかな坂道を登った先に白壁に瓦葺きの芝居小屋が見えて来る。金毘羅参りで隆盛を誇っていた当時の様子を窺い知ることの出来る町の文化遺産だと言っていいだろう。
昭和45年に国の重要文化遺産に指定されたことにより、ここに移築されるまでは、時代の波に逆らえず映画館として使われていたこともあったと言う。
現在は昭和60年から四国こんぴら歌舞伎大芝居が行われるようになり、当代の人気歌舞伎スターがこの小屋を訪れて芝居をしている。
金丸座の中に入ると、ちょうど今からガイドを始めると言うので、脱ぎかけの靴を履いたまま、ボランティアのおじさんの話を聞き始めた。

旧金毘羅大芝居正面

内木戸にて

鳥屋にて、開けると花道
まず最初に見物客は木戸と呼ばれるくぐり戸を通って札場でお金を払う。演者がタイミングを伺う鳥屋(とや)とよばれるカーテンを開けるともうそこは花道に続いている。客も花道を歩いていいのかとちょっと面喰らう。そして目の前に広がる光景にもっとびっくりする。
本格的なガイドとどこまで入ってもらってもいいです的な懐(ふところ)感で、しかもカメラもOK。これで¥500ならかなりお得と言っていいだろう。ぜひとも金毘羅参りの際はここへ訪れていただきたい。
まずは客席の話をしよう。両サイドの花道の間に升目状に区切ってあるところを平場という。左右に渡された幅の広い渡し板を通って誰もが自分の席に器用に向かう。縦に区切られた木は状況によっては外されることもあるので、見た目よりは広く座れる。舞台の方から今入って来た木戸に向かってなだらかな傾斜で上がっているため後ろからでも見やすい。
花道の両サイドは東西の桟敷で二階の桟敷には貴賓席もある。二階正面には前船・中船。後船席がある。料金は¥7000、から¥13000。無理してでも¥13000の席で見たいものだ。
ガイドさんの呼びかけで天井を見上げると、ブドウ棚と呼ばれる竹で編んだ格子状の天井があり、花吹雪を散らすことが出来るようになっていて黒子さんが歩く為の渡し板が見える。

花道から平場

ブドウ棚と顔見世提灯

すっぽん
真ん中正面にぶら下がっている顔見世提灯は役者の番付けになっている。中央は中村・・さんの家紋だと聞いたがすっかり忘れる。
花道を進むとと幽霊や妖怪だのが出て来るすっぽんと呼ばれる穴があり、その先に空井戸とよばれる舞台下につながっていて早替わりなどに使われる穴がある。穴と言っても舞台の板があって、その上に役者が乗って上がったり下がったりする。出て来る穴によって、役の格付けが決まっているのも面白い。
舞台まで来ると中央に廻り舞台があり、その中央にセリがある。セリ上がって来る役者を見ながら、拍手とともに掛け声がが聞こえて来るような気がする。こういう舞台は上がった者にしか分からない震えにも似た感動があるんだろうなと羨ましく思う。

空井戸

廻り舞台

舞台を袖から
舞台裏に廻って来ると楽屋がある、じつに合理的な配置だと思う。床山や衣装方などがあり、中にはお風呂まである。
そのまま階段を下りて行くと、奈落の底に落ちて行く。聞えは悪いがここが奈落で、廻り舞台や、セリ、空井戸などで演出をおこなう機械室のような場所であるが、同時に舞台中は、役者が血相を変えて走り回る場所になる。

楽屋のお風呂

奈落の底

廻り舞台を回すための踏み石
一度TVで当時の勘九朗(今は勘三郎だっけ)のドキュメントを見ていると、見えを切りながら下がると、一目散に走って早替えをして、板に飛び乗っていたことを覚えている。舞台上と舞台裏の緊張感のあるやり取りが、音や殺気になって聞えて来そうな感じになって、面白くなってくる。
二階席への階段を上がって前舟9番に座って下を見下ろす。こうやっていの1番から順番に番号がふってあるので、今の映画館と同じだと思っていい。

前舟9番

かけすじ

前船・中船。後船の様子
見上げるとかけすじと呼ばれる役者を宙乗りをする装置が真直に見える。考えてみると演目や好きな役者が何を演じるかを事前に考えて席を取らないといけないので歌舞伎は奥が深い。

金丸座の鶴丸
開閉する明かり窓で、夜昼の転換を演出するために歌舞伎はお昼間に行われる。暗がりで金丸座の鶴丸の提灯が美して柔らかな明かりを灯している。JALかと思ったら座布団はANAの提供だった。どっちでもいいが、歌舞伎のかの字も知らない人でも、ここは楽しむことのできる場所、そしてこういう場所を残そうと立ちあがった琴平の町に人に感謝して、この旅はまだ続くのである。