小松浩子個展
‐第三者遠隔認証‐

2019.02.23 - 03.17

ARTIST STATEMENT

「 」は
「 」がなければ
存在できない

小松 浩子 Komatsu Hiroko PROFILE(2019年現在)

1969年神奈川県生まれ。2009年の初個展以降、国内外で個展、グループ展多数。

2010〜2011年、自主ギャラリー・ブロイラースペースを主催、毎月個展を開催。

2015年、ドイツのフォトフェスティバル「The 6th Fotofestival」で発表された作品が、 イタリアのMAST財団に収蔵される。2017年、DIC川村記念美術館の光田ゆり氏のキュレーションで行われた『鏡と穴-彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子』の展示作品「人格的自律処理」と、イタリアのMAST財団の「THE POWER OF IMAGES」の展示作品「The Wall from 生体衛生保全」で第43回木村伊兵衛写真賞を受賞。

2018年6月ニコンプラザ大阪 THE GALLERYでの第43回木村伊兵衛写真賞写真展後の初個展となる、「第三者遠隔認証」と名付けられた今回の展示では いずれもバライタ印画紙、8×10サイズ 1500枚、110cm幅ロール 150mを使った大規模な展示となる。最近の展示として、IG Photo Gallery「生体価格保証」、埼玉県立近代美術館「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」などがある。

STORY

搬入作業
搬入部隊は午前中からすでに体制を整えていた。部隊の総勢は6名、手慣れた手つきで作業は続けられ、小松さんは終始的確な指示を出しながら自らも動き続けた。まずは壁と床に1500枚ほどの8×10インチのプリントをびっしりと貼り込んでいく。壁のものはピンで床のものはタッカーで固定していく。次にロール状のプリントと続くが1100mmほどの筒状のロールは15mとも30mともあるという。優に10kgは超えていると思うが、それをいとも簡単に小松さんは扱う。太めのワイヤーシステムが壁の間に通され、計画通りの方向にプリントは渡されていく。1本、2本、3本と一体いくらあるのかというほどロールは広げられ掛けられ想い通りの形でとどめられる。それはじっくりと日が暮れてからも続けられ、残りは翌朝に回された。
最初に小松さんにお会いした際に、これまでに開催した展示のエピソードを十分に伺っていたので大体のことは想定内と思っていたが甘かった。

HIJU GALLERYでの展示
個展は2019年2月の終わりから3月にかけて開催された。会期が始まるともはやギャラリーの入り口から見るものを拒む。「そのまま入ってもいいですよ」と言われても、扉を開けたところから始まるおびただしいプリントの上に、まずは自分の足を踏み込む勇気を強いられる。その上に雨が降るとなると、自らの靴の底に付着した水分にプリントが張り付いてメリメリとはがれていく音がする。「大丈夫です。」と言われても圧倒的な罪悪感に苛まれる。見る者のハードルを最初からどこまでもあげておいてから始まる展示は見たものの体のどこかしらにしみ込んでいて、あの独特のうねる大判のロールプリントからにじみ出てくる酢酸の匂いとともに脳裏からもまた身体からも容易に抜き取ることが出来ない薬的なまたはとげ的な要素があると言える。

後室は前室より続いて大判のロールプリントが器用に回り込んできて部屋の隅で巻かれたまま終わりを迎えている。床のプリントは前室から続いて後室にも入り込んできて壁を這い上がるようにきっちりとびっしりと貼り込まれている。また透明のフィルムに巻かれたボックスが壁からいくつも浮き出ている。床には一部だけプリントが切り取られている部分があり、そこにはモノクロの映像が投影されている。まるでうごめく沼のようでもある。

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TOPICS

展示に際してDMを2種類制作していたのだが、他のギャラリーやゲストの皆様に事前に発送したグレーベースのものと、ギャラリーで配布したホワイトベースのものを中央で合わせて初めて完成するという趣向だった。しかもホワイトベースのほうは私家版写真集と同じ制法で梱包用ラップで包んだフィルムのベタ焼きがホッチキスで留められている限定100部の豪華版である。これも一つの作品としてとらえていただいて、もしお手元にある方は大切に長くお持ちいただければと思います。

写真集のご紹介