浦芝眞史個展
‐触彩の性‐

2019.05.11 - 06.02

ARTIST STATEMENT

台湾、香港、バンコク、ダッカなど、アジアの国々を旅行しながら、また大阪に住みながら、撮った写真。たまたま生まれた大阪、そして大学時代にインドを訪れたことがきっかけで、アジアの空気が好きになり、旅行で訪れた都市。そこで、たまたま、様々な場所で、様々な出会い方をした人たち。いろいろな場所で、人生と性の彩りに触れる。

性(せい)は、性(さが)とも読める。

さが【性】
1.(自分ではどうしようもない)生まれつき。性質。
2.運命。常のならわし。
※『岩波国語辞典第七版新版』より引用

あらゆることがらは、すでに決まっていて、選べないように感じることがある。
国籍、性別、外見はもちろん、場合によっては人生の選択も。
膨大な彩りと運命の前で、外見や性別を元にした区別は、あまりに狭く、もはや取るに足らないものに思える。
私は、自分の目で見た、今の輝きを捉えたい。

浦芝 眞史 Urashiba Masashi PROFILE(2019年現在)

1988年大阪府生まれ。男性ポートレートを撮影した作品「ゆく、ふれるやいなや」で、2015年に第13回写真「1_WALL」のグランプリを受賞。2016年に銀座「ガーディアン・ガーデン」にて個展「身体の森で」を開催。2019年12月、豊中のGalerie de RIVIEREで新作「スパークリングin森」を開催。

EVENT

OPENING RECEPTION | 5月11日(土) 19:00~
特別イベント | TALK SHOW| 6月1日(土) 19:00~

STORY

さっき生まれたばかりというほどナイーブな眼差しで小さな写真がいっぱい詰まったボックスとスクエアなジンをかかえて浦芝眞史さんはギャラリーにやってき来た。ほとんどいつも自転車でやってきては毎回新しい顔をしてやって来る。当時、展示のために調整を続けていた写真家 野村恵子さんのご紹介で知ることになった浦芝さんは、ビジュアルアーツ専門学校大阪校写真学科の学科長を務めており、非常に多忙を極めながらも精力的に各地を飛び回り作品制作を行い発表を続けていた。

ビジュアルアーツ専門学校大阪校 写真学科
https://www.visual-arts-osaka.ac.jp/gakka/photo/

「身体の森で」から

2015年に第13回写真「1‗WALL」グランプリを受賞して、翌年開催した受賞展「身体の森で」から4年、浦芝の眼差しは変わることなく自らの性に戸惑い生きる人々に向けられている。受賞展に寄せて、“ただ私は、彼らの身体を今のままでも十分に美しいと思った。”と言うように、被写体に寄り添う浦芝の制作スタイルは変わることなく、「まだまだもっと撮りたい。」「まだ半分も撮れていない」と言うように、活動への意欲を見せている。

セットアップ

個展が決まってから足しげくギャラリーに訪れてはずいぶんと忙しそうに立ち動いていた。ある時はプリントと映像の重なりを調整したり、ある時は音と空間の融合を確認したりと来るたびに新たな課題を自分に課していた。その中でプリントを立体的に重ねて見せる表現にもう一つしっくりとくるものが無いようで、それでは素材から考えてみようということになった。透明の出力メディアにプリントした作品を透明のアクリル板に貼ってみてはどうだろうという提案を浦芝は受け入れた。そしてそれは何度かの修正の後に展示までこぎつけた。

搬入のこと

搬入は5月10日(金)の午後、浦芝が務めるビジュアルアーツ専門学校大阪校写真学科の授業の一コマとして多くのの学生とともに行われた。ほとんどのレイアウトは事前に仕上げられていた同タイトルのZine「触彩の性」で完成されていたのだが、それまでの過程はいろいろと試行錯誤の連続でもあった。

HIJU GALLERYでの展示

浦芝はよく地球の質量の話をする。地球の質量は常に一定であって様々に移りかわる変化も地球規模から見ればたいしたことではないと言う。同様に日本という国の大阪という場所で男という性を持って生まれたことも、実は偶然であってもっと違う国のもっと違う性として生まれていてもおかしくないと思えてくると。世界に質量が何かの作用によって変化するように我々人間も様々な作用によって生まれて、そして変化していくものだと捉える。今回の展示ではプリントが映像が音が様々に影響を与えていく、作家自身のテーマ性をよく表した展示だと言える。

Special thanks to Landmark for development of sign display.
https://www.lm-sign.jp/
Special thanks to Sugar-cog for projection mapping movie.
https://www.sugar-cog.com/
特別イベント

TALK SHOW|6月1日(土) 19:00~
ゲスト|赤鹿麻耶×浦芝眞史×成田舞×堀井ヒロツグ×真鍋奈央×山元彩香

ゲストの紹介(五十音順・敬称略)

【赤鹿 麻耶】
1985年 大阪生まれ 大阪在中
2008年 関西大学中国語中国文学科東アジア映像文化論専攻卒業
2010年 ビジュアルアーツ大阪専門学校写真学科卒業
http://akashikamaya.com/#/home
【浦芝 眞史】
1988年 大阪生まれ 大阪在中
2011年 関西大学法学部政治学科卒業
2013年 ビジュアルアーツ専門学校・大阪 写真学科卒業
https://urashiba.com/
【成田 舞】
1984年生まれ 京都在中
2007年 京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業
http://www.naritamai.info/
【堀井 ヒロツグ】
静岡県生まれ、京都在住
早稲田大学芸術学校 空間映像科 写真専攻卒業
京都造形芸術大学 非常勤講師
https://www.hirotsuguhorii.com/
【真鍋 奈央】
1987年 徳島県生まれ 大阪在中 
ビジュアルアーツ大阪専門学校卒業
http://nao-manabe.com/
【山元 彩香】
1983年 神戸市生まれ 神戸市在中
2004年 カリフォルニア・カレッジ・オブ・アーツ 交換留学
2006年 京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース卒業
http://ayakayamamoto.com/

6月1日(土)には関西に縁のある同世代の写真家6名によるトークショーが開催された。バラエティーに富んだ作家が集まり、まさに個性と表現者としての土台をしっかりと持った登壇者の言葉に、共通項を見出す人達や今から写真家として立って行こうとする若者たちの五感に響くまたとない夜となりました。ご登壇いただきました皆様ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。また当日お越しいただきました皆様ありがとうございました。

トークショー終了後の記念撮影にて

百々俊二ご夫妻とギャラリーにて

TOPICS

金村修さん、石田省三郎さん、小松浩子さんと都市や風景などを主に撮影する写真家の皆様の展示が続き、その後笠井爾示さん、川島小鳥さん、そして野村恵子さんと続く展示の中にちょうど浦芝眞史さんが入ってきた時に、頭の中に「ヒューマン」という言葉が浮かんで来たのです。ギャラリーが「今やっている展示はすべてヒューマンでつながっている」んだと。その時からこの展示の方向性がはっきり見えた気がしたのです。

写真集のご紹介

触彩の性
Touching the colors of life and sex
@2019 Masashi Urashiba
自主出版 限定100部