譚昌恒写真集

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譚昌恒(Hang Tam)「HONG KONG」藍出版/bleu publishing、2012年。

譚昌恒は1978年香港生まれ、香港を拠点に活動する写真家である。2012年香港公開大学(Li Ka Shing School of Professional and Continuing Education)の商業写真コース終了。2002年、24歳の時に解款員(解雇官とあるがよくわからない)として働いている時に、強盗に遭遇し右頸部大動脈を切断する大けがを負う。幸いにも命は取り留めたが、「潜在意識にある言い表せない不安が作品に映し出され、写真を通して自分の存在を再認識することを決意した」と、この経験が写真を始めるきっかけであると述べている。また日本の写真家 森山大道や深瀬正久の写真に影響を受けたとも語っている。2011年-2012年にかけて、タクシードライバーとして働きながら、客待ちの時間で撮った写真を、2012年ファースト写真集「HONG KONG」(藍出版/bleu publishing)として刊行する。これまでの写真集に「蕩」(紅出版、青鳥文化、2014年)、「遊樂場/Playground 2011-2015」(香港出版、.2015年)、「TV」(自費出版、2016年)、「花與我/Flower and me 」(自費出版、2016年)、「存在/不存在、Existence / Nonexistence」(brownie publishing、2018年)、「香港二」「某個快門」(2019年)があり、また電子書籍として「Bangkok」「Taipei」(共に2014年)がある。

本書は香港の街を撮ったモノクロのストリートスナップである。いくつかのインタビューに答えているが、要約するとこんな感じである。「私は香港の写真家で香港を撮っているが、自分の人生も撮影している。私にとって写真はまるで鏡のようなもので、シャッターを押すともう一つの自分が反映される。街中にはいろんな欲望が渦巻き、撮った私の欲望をも反映している。また私にとって写真は美しい芸術作品ではない。シャッターを押すと、それはすでに存在しコピーであるからである。私が芸術作品を作ったとしても、 それはすでに存在しているので、簡単に写真を撮ることができる。しかしいくつかの制限により、すべてをコピーすることは不可能だ。 また出会ったときに肉眼では見えないものもあるので、私にとって写真は出会いとコピーの中間である。写真は人の心を明らかにし、撮った写真から本当の自分が認識されると思っている。」