川内倫子写真集

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川内倫子 Rinko Kawauchi「うたたね」「花火」リトルモア、2001年。

川内さんは滋賀県生まれ。成安女子短期大学卒業。1997年第9回ひとつぼ展グランプリ受賞、2002年日本写真協会賞、第27回木村伊兵衛写真賞を両作で受賞。2009年には第25回インフィニティ・アワード芸術部門受賞(アメリカ・ICP主催)など、日本を代表する写真家の一人として国内外で活躍を続ける。本書は雑誌「真夜中」など独創的な出版物を手掛けるリトルモアより刊行された。

「死んでしまうということ」と副題が付けられた「うたたね」は、日々の生活の中で出合う様々な瞬間を捉えているが、生命の連続する広がりのような瞬間もはちきれんばかりの命の緊張感もそのすべてが実は「死んでしまうということ」と表裏一体であり、あたかも「うたたね」という呪文が解けるかのような危うげなものの上に成り立っているという現実を提示しているようだ。それは日々写真を撮る行為の中でおのずと見出された眼差しであり、まぎれもなく自身が「生きているということ」を感じることのできる瞬間である。多くの写真は同じようなトーンで撮られていて、それはローライフレックスの柔らかな色調と6×6サイズのフィルムで撮られたスクエアな写真の取り合わせと相まって、同じような緊張感を最後まで保っている。もう一冊の「花火」の副題は「美しいということ」。両書ともB5変形、ソフトカバー、アートディレクションは松本玄人さん、デザインは山名晶子さん。ちなみに「うたたね」の表紙のスプーンに載っているものはタピオカです。