ジョック・スタージェス写真集

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Jock Sturges(ジョック・スタージェス)「The Last Day of Summer」Aperture(NewYork)、1991年。

ジョック・スタージェスは1947年ニューヨーク生まれ。マールボロ大学(Marlboro College)やサンフランシスコ芸術研究所(San Francisco Art Institute)で写真や知覚心理学を学ぶ。本書はニューヨークを拠点に写真集や雑誌を出版し、近年はデジタルコンテンツの配信にも力を入れている写真財団Aperture(アパチャー)から出版された。1980年代から90年代にかけて北カルフォルニアやフランスMontalivetのビーチや自然の中で過ごすナチュラリストである自身の母親や娘、友人家族や子供たちを捉えたポートレートである。ゆったりとした8×10サイズのカメラで撮られた肌理の細かいモノクローム写真には、一夏を過ごす人々のおだやかな時間が捉えられている。無表情のまま真っ直ぐにこちらを見つめる視線、無防備に重なり眠る静かなまでの浜辺の情景はある意味啓示的で、帰る場所を見失った天使たちのような雰囲気である。子供のヌード表現もあったため、1990年にFBIにより児童ポルノ法違反としてスタジオ内のネガや作品が押収される事件となったがその後不起訴となった。この事件は当局による表現の弾圧であると当時アメリカで大きく取り上げられ市民、作家、メディアなどを巻き込んだ一大論争となった。本書はその翌年の1991年に出版されたが、論争は現在でも静かに続いているのは事実である。