北田瑞絵写真集

photobookloop.day57

北田瑞絵 Mizue Kitada「一枚皮だからな、我々は。」塩竈フォトフェスティバル、2017年。

北田さんは1991年和歌山生まれ、和歌山在住の写真家である。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラフィコース卒業。2014年「第11回 写真1_WALL」ファイナリスト。2016年「塩竈フォトフェスティバル」写真大賞受賞。本作はその副賞として制作された。アートディレクションはタキ加奈子(soda design)さん、編集は菊田樹子さん。

ゴム製の白い大きなバッテンをギュッと引っ張るが力の入れ方がよくわからなくて俄然あたふたする。和歌山の多くの場所(主に作家の生活空間に近い場所)で撮られた写真には、他にはない光の濃さのようなものが満ち溢れている。ページをめくる内に次第に臨場感や追体験を味わうような感覚になり、分け隔てのない暮らしや生命のサイクルの中に放り込まれたようで何らかの特別な使命感に包まれてくるようだ。ただ最後にまたあの大きなゴムをかける段になってどうやって元に戻すべきだったかとはたと悩む。そうかこういうことかと思う頃にはデザイナーの思うツボにはまっているのかも知れない。皮をむかないと見れない写真集なのである。本文に北田さんのメッセージがあるので後半だけ紹介したい。

「犬と過ごす生活のなかで、家業の農作業を手伝うなかで、私のために裸になってくれている女の子たちと時を共にするなかで、人や自然との向き合い方が変わっていき、命について考える時間が自然と増えた。自分が本当に撮っているものは何なんだろうと考えるようになった。ヌードを通して視るものは“性”から“生”になり、彼女たちを通して命を視るようになった。今、女の子も犬もみかんも植物もみんな、一枚皮をまとった命だと考えています。ここにある写真には統一性がない色々な被写体が写っているように見えるかもしれませんがすべてが私の日常のなかにある命です。」