沈昭良写真集

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沈昭良(Shen Chao-Liang/シェン・ジャオリャン)「台灣綜藝團・TAIWANESE VAUDEVILLE TROUPES」自費出版、2016年。

シェンさんは1968年台湾台南市生まれ、台湾を代表する写真家の一人である。台湾芸術大学応用メディア芸術修士卒業。1993年より本格的に撮影を始める。台湾の4大新聞社である自由時報写真部の副チーフカメラマンであり、台湾国立中央大学客員芸術家を歴任している。2012年までに3度、台湾行政院新聞局雑誌写真部門の金鼎賞を受賞。2004年フォトシティーさがみはら写真アジア賞、2006年韓国東江国際写真フェスティバル最優秀外国写真家賞、2012年アメリカIPA国際写真プロセクション・ドキュメンタリー写真部門グランプリ、2015年中国大理国際写真展最優秀出版賞、同年台湾の呉三連賞を受賞するなど受賞歴多数。

現在は、作品制作とともにキュレーターとしても活躍しており、ポートフォリオレビューなどのワークショップの開催や、様々な企画立案を行うとともに、台湾芸術大学の准教授も兼任している。これまでに「映像南方澳」(2001年)「玉蘭」(2008年)「築地魚市場」(2010年)を刊行、さらに「STAGE」(2011年)「SINGER&STAGES」(2013年)と本書を含めて「台湾綜芸団」3部作を刊行した。

「台湾綜芸団」とは演芸工業団体(移動式ショー劇団)のことで、1970年代から台湾における冠婚葬祭の場で歌やダンス(泣き女も含まれる)などの公演を請け負い活躍してきた。組立式特設ステージを使用して派手な装飾と目を引く出し物が繰り広げられていたが、その後照明と音響設備を備えたオープン式の電動花車や、きらびやかなステージカーに発展した。演目も当初はステージの上で華麗なドレスに身に包んだ歌姫による歌と踊りが主体だったものが、近年はビキニスタイルで歌ったり、さらには車上でのポールダンスや女装した男性のショーなども追加されている。

本書は2005年から2016年と長きに渡るフィールドワークの成果として完成されたが、ある特殊な状況下に集まる人々の姿やその日常をドキュメンタリー写真として記録することに成功している。さらには台湾という国が持つ文化の厚みやそこに集う人々の内的要素もあぶりだしていると言えるだろう。ハイスクリーン印刷全ページモノクロプリントとなる。