長島有里枝写真集

photobookloop.day78

長島有里枝 Yurie Nagashima「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、2017年。「Self-Portraits」Dashwood Books、2020年。

長島さんは東京都中野区生まれの写真家である。1995年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。1993年在学中に自身と家族のヌードを撮った「Self-Portrait」が、パルコ主催のアーバナート #2展(視覚造形をテーマに次世代のアーティストを発掘する企画展として1980年から1999年まで開催)でパルコ賞を受賞し写真家としてデビューする。1998年文化庁新進芸術家在外研修員としてアメリカに留学。1999年カリフォルニア芸術大学ファインアート科写真専攻修士課程修了(California Institute of the Arts, USA, Master of Fine Arts)、2001年「Pastime Paradise」(マドラ出版、2000年)で第26回木村伊兵衛写真賞受賞(同時受賞は蜷川実花、HIROMIXら)。2007年アーティスト・イン・レジデンスに参加しスイスへ。2010年「背中の記憶」(講談社、2009年)で第26回講談社エッセイ賞を受賞。2015年武蔵大学人文科学研究科博士前期課程修了。その他の著書に「YURIE NAGASHIMA」(風雅書房、1995年 )、「empty white room」(1995年 リトルモア)、「家族」(光琳社出版、1998年)、「not six」(スイッチパブリッシング、2004年)、「Swiss」(赤々舎、2010年)、「5Comes After6」(マッチ&カンパニー、2014年)などがある。

2017年、東京都写真美術館(TOP)で開催された大規模個展「長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」では、作家のこれまでの活動の全容が体系的に展示してあり、なかなか見ることが出来なかった初期の作品から比較的最新の作品までが見れる贅沢な空間であった。同展に際して製作された図録はその多様で煩雑な作家の経歴を、一本の筋として整理して見せてくれている。また当時スライドショーとして展示されていたものの中から、後年作家本人が選んでまとめた写真集「Self-Portraits」とは、対極をなすような関係性にあるような気がする。これまで何かと作品を発表すればセンセーションを巻き起こしてきた作家の、今見つめる先には何があるのだろうか?今後もずっと注視するべき作家であることは言うまでもない。