陳偉江写真集

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陳偉江(Chan Wai-Kwong)「黒色愉快 Happiness in Black」禅フォトギャラリー、2020年。

禅フォトギャラリー(Zen Foto Gallery)は、写真家マークピアソン(Mark Pearson)によって、2009年に東京で立ち上げられた出版社である。アジアの気鋭の作家に光を当て、埋れつつある日本の作家を掘り起こすような出版を精力的に行なっており、六本木にある併設ギャラリーでは貴重な展示を随時行っている。本書は陳偉江が禅フォトギャラリーより刊行した3冊目の写真集となり、2018年から2020年までに撮影されたオールカラーの構成となる。タイトルは香港の音楽ユニット軟硬天師(ソフト・ハード)が発表した「黒色愉快」からとっている。アートディレクションは柿沼充弘さん。

陳さんは1976年香港生まれ、現在も香港をベースに活動している写真家である。1988年九龍 新法書院の初中一年級で早々に中退しており、その後様々な職に就くが長続きはしなかった。やがて独学で写真を撮り始める。 日本文化に早くから傾倒しており、写真家の森山大道や荒木経惟などの写真に習い、フィルムカメラ でモノクロ写真を撮影し始める。寺山修司を読み漁り尾崎豊などの音楽に触れている。2010年、34歳になった陳はそれまでに撮りためていた写真をまとめた最初の写真集「情景-The Moment」(大判ソフトカバー、図版118点、自主出版)を制作、発表する。翌年「平遙 Pingyao」「啊~ Ah~」「灣仔 Wanchai」と立て続けに3冊の自主出版の写真集を発表。同年、香港東区西灣河(Sai Wan Ho)の自宅内で初めての個展「陳偉江攝影展」を開催する。注目すべきは最初の写真集「情景」ですでに陳の写真の方向性は示されており、何の迷いもなくその後全方向への広がりを見せるのである。香港島あたりのストリート、九龍あたりの客待ちの女、知ることのない路上の人々、何かしらに見える雲、数多の猫、花、猥褻な張り紙、セルフィー、自惚れ、偏愛、Tatoo、沢山の女、彼女、そして愛についてである。長く作家のそばにいる洪竹筠(Ada)やたくさんの友人、マークなどの支えもあり、それ以降も長く香港や澳門の様子をスナップし、数多くの自主制作の写真集を発表していく。そのいくつかは欧州を含め世界中に出回っており、総数もわからない。2011年グループ展「発光する港~香港写真の現在2011~」(ガーディアン・ガーデン、銀座)にて日本初個展。2012年に貧困をテーマに撮影された写真群が、香港WYNG財団特別写真賞を受賞する。

その他の写真集に、2012年「婷婷 Ting Ting」「東京1 Tokyo 1」、2013年「嫩蚊仔 Kids」「日常的愛 Everyday Love」「001-023」、2014年「係香港 This is Hong Kong」、2015年「油麻地 Yaumatei」(Zen Foto Gallery)「金鐘 Admiralty」、2016年「幾好 有啲介意 Little Mind Little Good」「愛的日常 春風秋雨又三年 Weathers of Love」「Rambo」、2017年「oh my little girl」 (Zen Foto Gallery)「深水埗 Shamshuipo」「兄弟 Brothers」、2018年「大阪 Osaka」「東京2013 Tokyo 2013」「Luna」「hello goodbye」「洪A hung A」「愛愛愛愛那麼多 Love Love Love Love More」「旺角是大佬 Mongkok Style」「廖雁寧 Liu Ngan Ling」「有時 Sometimes」「心形馬交 Something Macau」「色 Colour」、2019年「瘋狂少少叫做愛 Crazy Little Thing Called Love」などがあり、2018年洪竹筠、Mark Pearsonとの共著「死生1~3」がある。

個展は、2012年「婷婷」(艺鵠、香港)、2013年「愛的日常」( kubrick cafe,香港)、2016年「油麻地」(禅フォトギャラリー、六本木)、「愛的日常 春風秋雨又三年 僕が僕であるために 十五の夜」(牛房倉庫、澳門)、2017年「oh my little girl」(禅フォトギャラリー、六本木)、2018年「陳偉江特別展」(Hiju Gallery、大阪)など、香港、澳門、日本を中心に活動している。最近ではモノクロ写真のほか、カラー写真、映像制作などに力を入れている。

禅フォトギャラリー
https://zen-foto.jp/jp/artist/chan-wai-kwong