溝口良夫写真集

photobookloop.day97

溝口良夫 Yoshio Mizoguchi「ホタル / Firefly」蒼穹舎、2013年。

溝口さんは東京都八王子市生まれの写真家である。写真集団「獏」メンバー。1970年から独学で写真を始める。1990年「ホタル」で第27回太陽賞 準太陽賞を受賞。2013年ファースト写真集「ホタル」を蒼穹舎より刊行。その他の写真集に、2017年刊行の「草匂う日々」(日本カメラ社)がある。個展に「ホタル 1981-2010」(蒼穹舎、2014年5月)、「草匂う日々」(DESIGN FESTA GALLERY 原宿、2017年4月)他がある。

本書は作家が長年全国各地で撮った女性ポートレートで構成されている。写真すべてに撮影場所と撮影年代が付記されているが、一番古いもので1981年とあり、最新のものは2010年とある。あらゆる世代の女性像を作家なりの独特の感性で、ホタル=女性として捉えて表現している。時代も様々で対象となる世代もバラバラだが、非常にまとまっているように感じるのは、ブックデザインの成果か、作家のぶれない執念のせいか?巻末のあとがきを全文掲載しておく。

「夏になると、ホタル草を摘むで菜の花の枯れ枝でホタルぼうきを作り、夜空に舞うホタルを追った。ホー、ホタル来いと叫んで夜道をトボトボ歩いた。ホタル採りの時はいつも一人であった。無数のホタルが川の上に漂っていた。そして、ホタルを追うと逃げ足が遠く 捕らえて見れば美しくもなく、嫌な臭いを残す事もあった。女もホタルと同じだと、いつの頃からか思うようになった。ホタルが私の前から消え、女という得体が知れないものがゾロゾロと走ったり 飛んだりしているのに気づいた。そして、若さという甘い水が自分から消えた時、カメラというホタルぼうきで新たなるホタルを撮ろうと思った。そして、ホタルを撮り始めて35年以上が過ぎた。女の情念や、ほのかな色気が表現できていたらと思った。写真を撮らせてくれた人々に感謝したい。」