橋本照嵩写真集

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橋本照嵩 Shoko Hashimoto「瞽女/Goze」アロン書房、1988年。

橋本さんは1939年宮城県石巻市生まれの写真家である。1963年日本大学芸術学部写真学科卒業。1974年に写真集「瞽女」(のら社、写真家 北井一夫が代表を務めた)にて日本写真協会新人賞を受賞。同年「15人の写真展」(東京国立近代美術館)に「瞽女」を出品。1977年個展「草むら」(新宿ミノルタフォトスペース) にて木村伊兵衛写真賞ノミネート。1979年から1981年にかけて韓国にて李朝民画を撮影し「李朝の民画」(講談社)を刊行。1982 年には「男の顔」と題して著名人の人物写真をアサヒグラフ誌に掲載、木村伊兵衛写真賞のノミネートとなる。1996年からは北上川流域をリヤカーで撮影し、野外写真展「めだか展」を流域各地で開催。2011年には被災した宮城県石巻で撮影するなど精力的に活動している。その他の出版物に「瞽女の四季」(音楽之友社、1984年) 、「北上川」(春風社、2005年)、 「西山温泉」(禪フォトギャラリー、2014年「山谷」(禪フォトギャラリー、2017年)などがある。その他に個展やグループ展多数。

本書は1974年にのら社から刊行された「瞽女」の復刻版である。240頁全編モノクロ写真で、冬から始まる四季に章立てされている。また巻末には「私記 瞽女さんとの旅日記」(S47年3月10日~S48年3月15日)が付帯する。橋本氏は1969年の暮れから1973年秋にかけて、現在の新潟県高田市と長岡市の瞽女達とともに旅をした。瞽女は新潟県を中心に巡った盲目の女性旅芸人で、日中は農家を訪ね、門口で三味線を弾きながら短い唄を唄い、夜には長めの物語を弾き語って集まった村人に聴かせ、その対価として米や作物やお金を得ていた。工業化と都市化が進んだ1970年代には、本書に写る3人の老いた瞽女がその最後の存在となった。昭和日本の原風景であり、盲目女性がたどった原像であるのは言うまでもないが、何より日本写真の類まれな奥深さと多様性を感じずにはいられない。本書の最後のページに橋本氏の字で「えちごの野面を 瞽女んぼさの 三味唄につれられて (照)」と走り書きがある。