奥山由之写真集

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奥山由之 Yoshiyuki Okuyama「As the Call, So the Echo」赤々舎、2017年。

奥山さんは1991年生まれの写真家で映像作家、アートディレターでもある。2011年に発表した「Girl」で第34回キヤノン写真新世紀優秀賞を取った時はまだ20歳であった。

個人的なことだが子供を持たない私にとって子供が写る写真は今でもどこか苦手である。ただここに表現されている世界観は知り合い家族と暮らす日々の「生活」だけには留まらず、それを少しだけ超えたところにあるように思う。自身「グレー」と表現する時代を経て「写真の持つ気配」を取り戻すまでの「再生」の物語であり、それは奥山氏が「球体」と表現する自然の摂理のことかも知れない。「呼びかけたから、こだまが返って来たんだ」もう一度動き始めた作家の世界観は今の日本を豊かな球体で包み始めている。

アートディレクションは葛西薫さん。布張り上製本。

アーロン・マッケロイ写真集

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Aaron McElroy(アーロン・マッケロイ)「Reds」Sun(New York)、2019年。

アーロン・マッケロイは1978年生まれ。現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動している。巻末に「Abstractions of red as sex love and death.」とあるが表現は非常に直感的でありまた具体的でストレートに響いてくる。同じようなセクシュアリティをテーマに刊行された「I Lied」(2014年Art Paper Editions)とはまるで成り立ちが違うような気がする。

林舒写真集

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林舒(Lin Shu)「鼩鼱(Qu Jing)」Jiazazhi Press(中国・寧波)、2015年。

Lin Shu(林舒)は中国福建省生まれの写真家で現在は北京で活動している。鼩鼱(Qu Jing) は中国語でトガレネズミの意味とあるがモグラの仲間のshrew・トガリネズミとの表記もある。全編を通じて水墨画のような独特なぼかし方がなんとも中国の写真らしいが、風景とたぶん作家の彼女らしい女性を捉えた写真が混じり合って美しいイントネーションになっている。布張り上製本の表紙はスエードのような手触りで触覚に作用するようだ。Jiazazhi Pressは言由(Yanyou)により設立された中国の出版社である。詳細はT&M Projects Jiazazhi Pressに詳しい。

野村左紀子写真集

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野村左紀子 Sakiko Nomura「月光」リブロアルテ、2018年。

東京の出版社リブロアルテから野村さん単独では通算5冊目の刊行となる本書は台湾の男性モデルを撮ったヌード写真集である。明度を抑えた写真にはベッドの上でしなだれかかる2人の男性モデル達の限りなく無に近い表情のショットが続く。時が止まっているかの様だがその後その表情に笑みが溢れるのか悲しみに涙するのかはわからない。A3サイズ中綴じ製本は流石に迫力がある。アートディレクションは町口景(マッチ&カンパニー)さん。

野村さんと言えば「Another Black Darkness(Akio Nagasawa)の展示が印象的だが、それはまた別の機会に!

原芳市写真集

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原芳市 Yoshiichi Hara「淑女録」晩聲社(Banseisha)、1983年。

巻末に作家自身が語る「ぼくと淑女録について」が面白い。一台の4×5インチカメラとの出会いから始まり次第に撮影に魅せられてのめり込んでいく様子が窺い知れる。ストリッパーや舞踏家、女将など様々な職業に就く女性達のポートレート集であるが作家自身の淑女のコレクションだけにはとどまらない自身の撮影記録集である。中目黒のpoetic scapeでお会いした時の気さくでさりげない対応が懐かしいが、残念ながら2019年にお亡くなりになられた。ご冥福をお祈りします。