赤鹿麻耶写真集

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赤鹿麻耶 Maya Akashika「風を食べる(Eating wind)」Visual Arts College/赤々舎、2012年。

赤鹿さんは大阪府生まれ。関西大学中国語中国文学科東アジア映像文化論専攻卒業後、ビジュアルアーツ専門学校大阪写真学科にて写真を学ぶ。本書は2011年、第34回キヤノン写真新世紀グランプリを受賞した翌年、第10回Visual Arts Photo Award受賞作品として出版された。この賞は優れた写真家の作品を写真集として後世に残すことを目的としている。

どことなくパフォーマーのような人物を捉えた写真が続くが、作家自身「実験のようなもの」と語るように「イメージをもとに出発する」ことを前提とした創作の部分が強く押し出された作品のように感じる。「ぴょんぴょんプロジェクトvol.1 」(大阪 桃谷の空き地、東京 銭湯松の湯、2015年)「大きくて軽い、小さくて重い」Kanzan Gallery(東京、キュレーター菊田樹子、2017年)などの展示を見ても、自らより湧き出るイメージの可能性を多く残した創作をベースとしているように思える。B4サイズ上製本、和紙のような手触りのカバーが印象的である。白場をふんだんに使ったデザインが作品を非常に潔く感じさせていて気持ちいい。

石川直樹写真集

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石川直樹 Naoki Ishikawa「髪(Hair)」青土社(Seidosha)、2014年。

石川さんは1977年東京生まれ。、早稲田大学第二文学部歴史民俗系専修卒業後、東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士の学位を持つ。

1998年、20歳の時にマッキンリー(デナリ)の登頂に成功し、その後23歳までに7大大陸最高峰登頂に成功する。現在も様々な挑戦を続けながら写真の発表を続ける。2007年「New Dimension」赤々舎、「Polar」リトルモアにより日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞、2011年「Corona」青土社で土門拳賞を受賞、写真集以外にも開高健ノンフィクション賞を受賞した「最後の冒険家」集英社など著作も多数あり、またメディアなどの露出も多い。

巻末の須田一政さんの「そこにあるもの」という書評がすばらしいが、それよりもA5サイズのペラ紙に石川氏がこの作品に取り組んだいきさつがさらっと書いてあるのだが、それがなんとも言い訳みたいで面白い。すべてのことは「未知の森への入り口」を見つけてしまう冒険家(作家)の性(さが)なのである。

ペトラ・コリンズ写真集

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Petra Collins(ペトラ・コリンズ)「Discharge」Capricious Publishing、 2014年。

ペトラ・コリンズは1992年カナダ生まれの写真家であり、アーティスト・モデル・ディレクターとしてニューヨークで活動している。ライアン・マッギンレーの撮影旅行にモデルとして参加したことでも知られる。

本書に登場するのは若い女性とスマフォである。 "I'm used to being told by society that I must regulate my body to fit the norm," 直訳すると「私は自分の体を規範に合うように調整しなければならないと社会から言われるのに慣れている」。スマフォを社会の規範の象徴と捉えて、自分はそこから外れないように生きている1人の若者である。彼女の撮るものは妹や友人など極めて個人的な対象であるが、時にムービー監督の様な目線で捉えており、その主人公はもがき、苦しみ絶望したり、Why?と頭を抱えているようである。2008年から6年かけて撮影されているが、彼女がちょうど16歳から22歳と自己を確立していく非常に不安定な時期であり、スマフォが放電(discharge)していく様と同じようにとらえているのではないだろうか?

Li Hui写真集

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Li Hui「No Word From Above」self-published、2017年。

Li Huiさんは中国の杭州と上海を拠点に活動する女性写真家である。フィルムカメラを用い多重露光などの技巧を使った作品は独学とは思えないほど完成度が高い。他の中国の写真家とはテイストが違うように感じられるが、それは自ら話すように内気な性格で音楽や絵画から受けた影響が大きいのだろうか?黄色い封筒を開けると緑色の透けるほど薄い生地に包まれた小さな作品集が出てきた。包んであるビニールの上に貼り付けてある手作りの丸い月形の紙片の裏に小さい文字で「Hope you like the book」とある。私はすでにこの本がどうしてここにやってきたのかも忘れてしまっていたが、カバー裏のデザインも秀逸で大好きだと伝えたい。
Li Hui の情報はGALLERYPHOTOGRAPHSに詳しい。

藤岡亜弥写真集

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藤岡亜弥 Aya Fujioka「川はゆく(Her Goes River)」赤々舎、2017年。

藤岡さんは広島県呉市生まれ、現在は広島在住。本作で第41回伊奈信男賞、第27回林忠彦賞、第43回木村伊兵衛写真賞と立て続けに受賞している。

写真集を読み進めるとそこには広島を巡る普段の日常がスナップされている。街中や公園や川辺に集う人々、集会や行事に参加する人々の写真があり、その合間にはあたりまえのようにあの日ヒロシマに起こった事実を伝える写真が入り込んでくる。電車の乗客、咲き誇る花、原爆ドーム。何度かページをめくっているとある時から今まで見ていた感情とは全く別の意味がそれらの写真に付記されているように思えて、まるでオセロが黒く裏返っていくような瞬間がやってきて思わずページを閉じてしまった。でも何度か読み返す内にそれらがすべてでないことに気づかされる。バスタブの前で立つ女性、赤い服の彼女、川辺に座る女性が出てくるあたりからどんどんと救われるように感じた。広島にも雪が降る。そんな当たり前のことも知らなかったのかと今更ながら胸がつかえる。不思議な本である。ソフトカバー、ケース付き。アートディレクションは松本久木さん。