梁丞佑写真集

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梁丞佑 Seung-Woo Yang「青春吉日(The Best Days)」禅フォトギャラリー、2012年。

梁さんは1966年韓国生まれ。1996年に来日、日本写真芸術専門学校卒業、東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院芸術学研究科メディアアート修了。2017年「新宿迷子」(禅フォトギャラリー、2016年)で第36回土門拳賞を受賞する。

欲望渦巻く新宿歌舞伎町を舞台に繰り広げられる人間模様をありのままに記録した「新宿迷子」を外の顔もしくは戦場とするのなら「青春吉日」はどちらかと言えば内の顔それは家庭のような温かさが感じられる。2019年に新装版が刊行されたが、表紙に韓国の紙幣10000ウォン(KRW)の札束が無造作に積まれているこちらが初版である。「昔の仲間の自死をきっかけに自身の軌跡と身近な人々の姿を記録した」これらの写真は、日記の様であり家族アルバムの様でありまた回顧録や自叙伝のようでもある。禅フォトギャラリーでお会いした梁さんは非常に穏やかな表情が印象深かったが、一歩腰が引けてる自分を隠すのがやっとだった。毎日新聞社・土門拳賞の梁さんの受賞コメントを読むと梁さんの実直な人となりが感じられて熱いものがこみあげる。

毎日新聞社 土門拳賞サイト記事
https://www.mainichi.co.jp/event/aw/domonken.html

川内倫子写真集

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川内倫子 Rinko Kawauchi「うたたね」「花火」リトルモア、2001年。

川内さんは滋賀県生まれ。成安女子短期大学卒業。1997年第9回ひとつぼ展グランプリ受賞、2002年日本写真協会賞、第27回木村伊兵衛写真賞を両作で受賞。2009年には第25回インフィニティ・アワード芸術部門受賞(アメリカ・ICP主催)など、日本を代表する写真家の一人として国内外で活躍を続ける。本書は雑誌「真夜中」など独創的な出版物を手掛けるリトルモアより刊行された。

「死んでしまうということ」と副題が付けられた「うたたね」は、日々の生活の中で出合う様々な瞬間を捉えているが、生命の連続する広がりのような瞬間もはちきれんばかりの命の緊張感もそのすべてが実は「死んでしまうということ」と表裏一体であり、あたかも「うたたね」という呪文が解けるかのような危うげなものの上に成り立っているという現実を提示しているようだ。それは日々写真を撮る行為の中でおのずと見出された眼差しであり、まぎれもなく自身が「生きているということ」を感じることのできる瞬間である。多くの写真は同じようなトーンで撮られていて、それはローライフレックスの柔らかな色調と6×6サイズのフィルムで撮られたスクエアな写真の取り合わせと相まって、同じような緊張感を最後まで保っている。もう一冊の「花火」の副題は「美しいということ」。両書ともB5変形、ソフトカバー、アートディレクションは松本玄人さん、デザインは山名晶子さん。ちなみに「うたたね」の表紙のスプーンに載っているものはタピオカです。

有田泰而写真集

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有田泰而 Taiji Arita「First Born」赤々舎、2012年。

竹芝駅のほど近く青い壁が印象的な鈴江倉庫ビルの中にかつてGallery 916はあった。2018年ビル取り壊しによる閉廊までの6年間、写真ギャラリーを主催したのが写真家の上田義彦さんである。上田さんは若い頃少しの間アシスタントを務めていたこともあり、2011年にアメリカで亡くなられた有田泰而さんのネガを預かって2か月の間暗室に閉じこもってプリントしたものが本作のベースとなっている。

有田泰而さんは1941年小倉生まれ、東京綜合写真専門学校で写真を学び、その後日本デザインセンター写真部に所属、広告写真を多く手掛ける。のちに油絵や彫刻など幅広い分野で才能を発揮した晩年はアメリカで活動していた。

本書は70年代初頭にカナダ人である最初の妻と生まれたばかりの男の子を被写体としたファミリー写真であるが、作品には作家の感性が色濃く反映されている。演出的な構図が軽やかで時代を感じさせない何かがあり、モノクロ写真とカラー写真との差異もほどよく感じさせない。世に出なければ幻であったろうし、こうして纏まることは奇跡で、傑作と言って間違いないだろう。

ラリー・クラーク写真集

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Larry Clark(ラリー・クラーク)「Kiss The Past Hello 」Luhring Augustine,New York / Simon Lee Gallery,London 、2010年。

ラリー・クラークは1943年アメリカ・オクラホマ州タルサ生まれの写真家、作家兼映画プロデューサーである。写真家であった母の影響で子供の頃より写真を始める。少年期から青年時代を過ごしたタルサでは、ドラッグやセックスにおぼれ暴力やパンクやスケボーに明け暮れるティーンエイジャーたちと生活を共にしながら、その実態を赤裸々に写した「Tulsa」(1971年)で衝撃的なデビューを飾る。90年代に入ると閉塞的なアメリカの若者たちの日常を描いた「Kids」「Bully」「Ken Park」など精力的に映画製作に力を入れた。本作はMusee d'Art Moderne de la Ville de Paris/Arc(パリ市美術館)で開催された回顧展「LARRY CLARK Kiss the past hello」に際して刊行された図録である。「Tulsa」「Teenage Lust」など過去の作品集から抜粋されたラリー・クラークの世界を網羅した宝箱的な内容になっている。

許乃文写真集

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許乃文 (Nai Wen HSU)「絶句 (Unspoken)」 自費出版(Self Published)、2017年。

台湾を拠点に活動する写真家 許乃文のファースト写真集である。漢詩の中の代表的な詩型である「七言絶句」を模してあり、7枚の写真が一つの紙に連続して印刷されて折り返されたものが4つ束になった凝ったデザインである。七言で一つの語形となり四つで一つの意味を成し、末尾の語句が押韻して行く絶句のようにイメージが呼応する。香港フォトブックフェア―の際にはパラパラと広げて壁に飾ってあった。当時彼女は気難しそうな顔をしてその内容について語ってくれたが、確か台湾ではなくて留学先のイギリスかどこかの風景だと言っていた気がする。台湾中部の出身でお勧めの台湾料理のお店の話ばかりに夢中になっていたので記憶がどうも曖昧だ。「実はその本持っているんだ」と言うと、「日本で一冊だけ売れたと聞いたがあなただったのね」と一気に上機嫌になったがシャイなところは変わらなかった。限定365部、帯裏にエディション付、デザインはChen Huang Chian。