松木宏祐写真集

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松木宏祐 Kousuke Matsuki「群青」自費出版、2017年。

松木さんは1983年大阪府吹田市生まれ、現在は東京都目黒区在住の写真家である。吹田東高校在学中に報道カメラマン・沢田教一氏の「安全への逃避」にカルチャーショックを受け、写真に興味を持ち始める。2006年大阪芸術大学芸術学部写真学科(土田ヒロミゼミ)卒業。2007年上京。スタジオ勤務を経て、2009年木寺紀雄氏に師事。2012年よりフリーランスとなる。スタジオ在籍中にMotoko Work Shop 2008に参加し、翌年「Motoko Work Shop 2008 Exhibion ーいま むかし これから」(KANZANあきち、赤坂)に出展。2008年「富士フィルム フォトサロン新人賞2008 発表展」(富士フォトサロン)にて、奨励賞(姫野希美選)を受賞する。同年第一回塩竈フォトフェスティバル Phat photo賞を受賞する。その他の展覧会に、2004年「生と死と性と私と精子に捧ぐ青春時代」(Beats Gallery、大阪)、2005年「Young Japanese Photographers」(名護博物館ギャラリー、沖縄)。2017年「群青」(ES gallery、表参道)。2019年「ポートフォリオマッチング展」(72gallery Numero、東京)などがある。現在はSPRiNG、CREA、&premiumなど、多くのカルチャー誌やファッション誌、広告、CF、CDジャケット、MVを中心に活躍している。 2020年3月には、生まれ育ち、写真を始めた高校生の終わりくらいから、23歳で上京するまでの青春時代を過ごした吹田の地で、影響を受けた地元の友人達との日々をテーマにした作品「ニュー・ホーム・スイート・タウン」(Galerie de RIVIERE、吹田)を開催している。

本書は作家が上京前から妻の妊娠までの期間を捉えた写真で構成されている。作家のキャリアや人生において非常に重要な時期の、私的な日常の風景を赤裸々に綴っている。あとがきに寄せて「群青とは、青が濁ってしまったのか 青が濃くなったのか 自分自身ではわからないが、青さだけではなくなってしまった 今の自分の色なんだと思う。」と語っている。プロカメラマンとして忙しく写真を撮る現在、「自分の写真を撮ってはいたが、まともに何年も見ていなかった」と話す当時の記録を改めてひもといて、写真集にまとめ、個展として見せたのには、それなりの決意と意義があるに違いない。写真表現と自己との在り方を模索した十数年の記録であり、笑いと涙にあふれる愛の賛歌である。