山元彩香写真集

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山元彩香 Ayaka Yamamoto「We are Made of Grass, Soil, and Trees」T&N Projects、2018年。

山元さんは兵庫県神戸市生まれの写真家である。2006年京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース卒業、在学中は絵画をはじめパフォーマンス作品や映像作品を制作、2004年California College of the Artsとの交換留学生時代に、カメラを借り外国人ポートレイト作品を撮り始める。2009年フィンランド、エストニアで撮影を始め、以後2010年エストニア、2011年ラトビアで撮影を行う。2012年1月「Nous n’irons plus au bois(もう森には行かない)」を CAP studio Y3(神戸)で発表。同年同タイトルで、東川国際写真フェスティバル ポートフォリオオーディション準グランプリを受賞。同年ファーストzine「amnion」を libroarteより刊行する。それ以降も2012年ラトビア、フランス、2013年フランスで撮影、2009年から2013年までに撮影されたポートレイト作品10点を、2014年1月「Nous n’irons plus au bois」(タカ・イシイギャラリーフォトグラフィー/フィルム、 東京)として発表する。ステートメントに「いきものを覆い隠している一枚の皮に、とことん魅せられふりまわされたいと願う。 言語による思考の伝達が断絶されたとき、身体中の全ての感覚をもって、彼女の名を融かしていく。言葉にも満たない音が流れるなか、次第にひとの形をした彼女達の翻訳不可能なイメージがたちあらわれる。」と記している。その後も2014年ラトビア、ロシア、2015年ウクライナ、2016年ブルガリア、2017年ルーマニア、2018年ベラルーシと撮影を続け、現地でも個展を開催している。2018年8月ファースト写真集「We are Made of Grass, Soil, and Trees 」(T&N Projects)を刊行。同名の個展をタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで開催、2014年から2017年にかけて制作されたポートレイト14点を展示した。ステートメントに「もしこの世に存在するあらゆるものを使って人間を創造することを試みるとすれば、土と木と草で作りたいと思った。 natureという単語は、自然であり、本性、とも訳される。 私の本性、人間の存在とは、という大きな問いの前にいつも立ち尽くす。 真っ白な状態で与えられる名前の奥にある本性を見てみたい。」と記している。2019年本書で、さがみはら写真新人奨励賞を受賞し、相模原市民ギャラリーにて受賞展を開催する。現在も東欧諸国や、アフリカ大陸マラウイなどで制作活動を続けている。2019年11月にはインディペンデント・キュレーターのカトウチカ企画のUnknown Image Series no.8 #1 山元彩香に「organ」(HIGURE 17-15 cas、void+)を出展、新旧の写真作品とともにラトビアで撮影された映像作品を展示した。

本書のタイトル「We are Made of Grass, Soil, and Trees 」(人は土と木と草からできている)はアイヌ神話から着想を得たもの。主に撮影を行う東欧の地で、言語でのコミュニケーションが難しいという状況にあらがわずに、音声のやり取りや身振りを通してのコミュニケーションを図り、撮影場所を決め、それぞれの土地で制作された衣装をあてがうという過程を通じて、被写体との間にある固有名詞を奪って行くという撮影スタイルもそうだが、どこにもないような街のどこかにあるような物語の中の登場人物のような、時代性も国籍も性別も生死も超越した一つの確固とした作品世界は、唯一無二であると言わねばならない。広色域のカレイドインキと通常インキを特別配合し作り出された独自の色表現により、プリントとは違った再現力に身震いするのである。