澄毅写真集

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澄毅 Takeshi Sumi「指と星ーFingers and Stars」リブロアルテ、2019年。

澄さんは1981年京都府生まれ、フランス在住の写真家でありアーティストである。東山高等学校卒業後、明治大学文学部文学科ドイツ文学専攻に進学、在学中は雄弁部に所属する。同校卒業後ベンチャー企業に就職するも、26歳で再び多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コースに進み、2010年に卒業する。在学中に応募した 2008年 第30回 写真ひとつぼ展で、東欧諸国を撮影した作品で入賞を果たし、銀座ガーディアンガーデンで展示を行う。2009年度 写真新世紀佳作(飯沢耕太郎氏選) 、2010年度 写真新世紀 佳作(大森克己氏選)となり、どちらも東京都写真美術館で展示を行う。2012年ファースト写真集「空に泳ぐーFly in the Sky」(リブロアルテ)を刊行。出版記念で出品したパリのアートフェアー「no found photo fair」で、写真集と作品を販売する。その中にAgnès B(アニエス・ベー)がおりコレクションに加えられる。2013年5月パリ移住を決意、現在はフランスを中心に作品制作を行っている。また2018年 直木賞受賞作家 島本理生氏の文庫本「匿名者のためのスピカ」(祥伝社文庫、2015年) の装丁に作品を提供したり、2020年 JR京都伊勢丹 20周年リニューアルグランドオープンのメインビジュアルに起用されるなど、活動は多岐に広がっている。京都や大阪、東京やパリを中心に個展、グループ展が多数ある。

本書に掲載されている図版の多くには、写真がプリントされた紙に自ら市販のカッターナイフや虫ピンを用いて、無数のスリットや穴をあけ、太陽光にかざし、その隙間や穴から溢れ出る光を撮影するという方法がとられている。また多重露光を繰り返した作品もある。常にオリジナリティーを意識して、すべての選択肢を排除しないという作家の意気込みが感じとれる。「指と星」出版時、クラウドファンディング kibidangoに寄せた文章の中に、「日中深夜、時間を忘れてカッターの刃を紙に沈ませる時、私は自分の指が、自分のものでありながら自分のものでないような気がします。一つ一つの切れ込みはクロスしてしまうと紙が崩壊してしまうので、慎重に、しかし着実に一本一本カッターの刃を入れていきます。何十、何百と切れ込みを入れていく中で、いつしか指は私のコントロールを抜けて新しい美を作っているように感じました。それは自分自身のオリジナリティーを発見することと同義でもありますが、私の脳の小さな世界を超えて、世界を拡張するような、そんな可能性を感じさせてくれることが何よりも嬉しかったです。パリに住んで5年。ここで個展や展示をしていますが、新しい世界があることを教えてくれたのは私にとっては指でした。」と語っている。