小松浩子写真集

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小松浩子 Hiroko Komatsu「Slope Way, Inagi, Tokyo 13:00 – 15:00, October 13, 2009」スタンダードエディション、自費出版、2018年。

小松さんは神奈川県生まれの写真家である。写真家 金村修氏の作品に感銘を受け写真家を志す。2006年 金村氏が主宰するワークショップに参加し、写真漬けの日々を過ごす。2009年11月ギャラリー山口(東京)に「チタンの心/Titanium’s Heart」を発表、幅約1メートルの印画紙に、連続して焼き付けたモノクロプリントで壁面全体を覆った作品が話題となる。2010年6月から2011年4月にかけての1年間は、アパートを借りて、自主ギャラリー/ブロイラースペース(Broiler Space)を主催。月一度のペースで個展を開催する。2012年9月「当事者研究/Inquiries of a Concerned Party,」(photographers’ gallery/KULA PHOTO GALLERY、東京)、2013年5月「具現的公共性/Embodiment of Public Nature」(ギャラリーQ、東京)など、年に数度のペースで個展を開催していく。2015年 ドイツのフォトフェスティバル「The 6th Fotofestival – Mannheim Ludwigshafen Heidelberg」(ZEPHYR、マンハイム ドイツ)で発表した作品「生体衛生保全/Sanitary Bio-Preservation」が、イタリアのMAST財団 (Bologna, Italy)に収蔵される。2017年「鏡と穴―彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子/人格的自律処理」(DIC川村記念美術館 光田ゆり氏キュレーション、ギャラリーαM、東京、)と、「THE POWER OF IMAGES/The Wall from 生体衛生保全、2015」(MAST財団)での展示で、2018年 第43回木村伊兵衛写真賞を受賞し、東京・大阪のニコンギャラリーで受賞展を開催する。その後も、2019年2月「第三者遠隔認証/Third Party Remote Authentication」(HIJU GALLERY、大阪)、2019年9月「生体価格保証/Bioprice Guarantee」(IG Photo Gallery、東京)など個展を開催している。最近の展示では「DECODE/出来事と記録ーポスト工業化社会の美術」(埼玉県立近代美術館、埼玉)に、「内方浸透現象/Internal Impregnation」を出品している。その他の活動として「小松浩子のモノクロ写真ワークショップ」( 川崎市民ミュージアム、2019年)など、多くのワークショップに参加、後進の育成に努めている。その他の写真集に「ブロイラースペース時代の彼女の名前」(自費出版、2012年)、「Port Area, Sakai, Osaka 12:00 – 14:00, May 4, 2010」(自費出版、2010年)、「“Book #1”」(自費出版、2016年)などがある。その他個展・グループ展多数。

LUSH Fresh Handmade Cosmeticsの「Vegan Life 連載 #3:ヴィーガン×写真家」のインタビューに答えて、「私は、工場の資材置場を撮ります。写真1枚で表現するのではなくて、大量の写真を見せることで空間を構成しています。写真は時間を止められるのですが、時間の進み方は分からないですよね。建設現場の写真だと廃墟にも見えるし建設中にも見えます。写真を床にも壁にも配置して、撮っている順番を混ぜこぜにして変な時間空間を作り出しています。それぞれの写真がそっくりだから、見ている人はわけが分からなくなる錯覚を起こし、不安な感じのする空間で方向も分からなくなります。こういうおかしな空間を作るのは、『もう1つの空間、違う空間があるんじゃないか』という投げかけです。私たちが普段見ているものが本物なのか、肉眼では見られない世界があるのではないかと考えながら作っています。」と答えている。

本書は、2009年10月13日13:00~15:00の2時間の間に、東京都稲城市の資材置き場で撮影された写真群の中から、100枚を選んでスキャン、普通紙に出力したもので、限定100部が刊行されている。2010年8月ブロイラースペースで開催された「Monthly Exhibition #03」”の展示で使用された写真の中から、リプリントされたオリジナルバライタプリント10枚が付いた20部限定のスペシャルエディションも存在する。厚手のボール紙製の表紙には、スタンプでタイトルが刻印されており、その中央部にはコンタクトシートの1カットがラッピングフィルムに包まれ、無造作にホッチキスで止められている。ホッチキスをはずしてラッピングを取れば、にわかに異次元の空間が広がって、今にも飲み込まれてしまわないかと、妄想が止まらない。