石田省三郎写真集

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石田省三郎 Shozaburo Ishida「Radiation Buscape」IG Photo Gallery、2018年。

石田さんは1946年岐阜県生まれ、神奈川県在住の写真家である。1969年 中央大学法学部法律学科卒業。1973年最高裁判所司法研修所修了、同年4月弁護士登録(第二東京弁護士会)し、多田武法律事務所、仙谷・石田法律事務所等を経て、2011年9月より石田法律事務所(東京都中央区)を営む。第二東京弁護士会刑事弁護委員会委員長、日本弁護士連合会刑事弁護センター副委員長、「検察の在り方検討会議」委員などを歴任。日石郵便局・土田邸爆破・ピース缶爆弾事件、沖縄ゼネスト事件、松戸OL殺人事件、ロッキード事件、リクルート事件、東電女性社員殺害事件など、戦後史に名を刻む刑事事件の弁護に携わる。また弁護士業務のかたわら、2017年 京都造形芸術大学通信写真コースを卒業。2018年 福島第一原子力発電所事故により「帰還宅困難区域」に指定された地域を、JR常磐線代行バスから撮影したファースト写真集「Radiation Buscape」(IG Photo Gallery、解説タカザワケンジ)を刊行し、写真家デビューを果たす。主な個展に、2018年「Radiation Buscape」(IG Photo Gallery、東銀座)、2019年「Crossing Ray」(HIJU GaIIery、大阪)、「Radiate-scape」&「Crossing Ray」(IG Photo Gallery、東銀座)、2020年「TSUKIJI JONAI 2018」(IG Photo Gallery、東銀座)がある。弁護士事務所併設のギャラリー/IG Photo Galleryを主宰し、多くの新進作家の発表の場を創るとともに、貴重な展示を開催している。その他の著作に『「東電女性社員殺害事件」弁護留書』(書肆アルス、2013年)、「TSUKIJI JONAI 2018」(IG Photo Gallery、2019年)などがある。

ギャラリーの写真集紹介ページによせて「見えないものに影響された風景の記録。」と題された文章に、「2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波に襲われた「福島第一原子力発電所」は、原子炉建屋の水素爆発、メルトダウンなどにより、大量の放射性物質を大気中に拡散させた。放射線という眼に見えない物質によって、人々は住み慣れた故郷から立ち退くことを余儀なくされ、『帰還困難区域』に指定された地域は、未だに放置され、将来の見通しも立っていない。 事故からちょうど5年目にあたる2016年、一年あまりをかけて、この地域を縦断して走行する代行バスの車窓から、道路沿線の現状の撮影を継続した。走行するバスの車窓からの視角・視点という限られた撮影条件の中で、ようやく切り取ることができる景観であっても、そのディティールから、原子力事故の不条理が浮かび上がってくると考えたからである。バスは、北上するにしたがって、『避難指示解除準備区域』、『住居制限区域』を通過して、『帰還困難区域』にいたる。時折、放射線量のを示す標識があり、3.5μSv/h近くの数値を示す。しかし、当然のことながら、その放射線自体は、目にすることはできない。いわば見えないものの影響を写したのがこの作品である。バスからの光景は、誰もが行きさえすれば見ることができる。しかし、その開かれた光景にすら、東日本大震災後には何らかの『目に見える』変化があるはずである。1枚1枚の写真のなかに現れているはずの微妙な変化に目を留めていただければ幸いである。」と語っている。