佐藤航嗣写真集

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佐藤航嗣 Koji Sato「えんの外」蒼穹舎 、2014年。

佐藤さんは1980年 東京都生まれの写真家である。松濤スタジオを経て、長山一樹氏に師事。2010年よりフリーランスとなる。2008年 写真新世紀 佳作。2009年 第一回写真1_WALL展 ファイナリスト。2010年 写真新世紀 佳作となる。2014年 写真集「えんの外」を蒼穹舎より刊行。同年2月、同名の個展をエプソンスクエア丸の内・エプサイトギャラリーで開催する。2018年からは、UM(united lounge inc. artist management division.)に所属。MUSICA、NYLON、SWITCH、Oggiなど多くのカルチャー誌やファッション誌で、星野源や桜井和寿、菅田将暉、松田翔太、渡辺直美などの多くの俳優やミュージシャンの撮影を手掛け、またJim BeamやOnitsuka Tiger、BEAUTY & YOUTH UNITED ARROWS、NEIGHBORHOODなど多くの広告写真も手掛けている。

エプサイトのインタビューに答えて、「僕はペンタックス67用の105㎜レンズがとても気に入っていて、それを5Dで使うためにアダプターを付けていたんです。だけど、アダプターが長くて、自分の撮りたい距離感で撮ろうとすると無限遠のピントが合わない。理想の絵を諦めたくなかったから、思い切ってアダプターを外してみたんです。そうしたら、すごく変な画面になった。何というか……絵が“ぐわんぐわん”している感じ。あおり(光軸をずらす操作)がむちゃくちゃに効いちゃっているんです。だけどデジタルカメラだったせいか、ハレーションの具合は撮りながら調整できた。(中略)だけど、この変な写真を見たときに、自分がやりたかったことや、スナップを好きな理由がもう一度目の前に広がったんです。『これをやろう!』って。」と答えている。

また2部構成された本書の後半「終、きっとそれは19才のいましろみつきだったんだ」の文章の中に「ある時、僕は友達に写真をみせた。友達は、なんかエイリアンズって曲があってさそれが聞こえると言った。そんな話をまだ19才になったばかりの彼女に言っていたんだ。なんか全てのものが現実か分かんないだよって。宇宙人かもしんないんだってよって。そしたらぽつりと真顔で私がエイリアンだったらどうする?ってつぶやいたんだ。今までの自分は何だか知らないけど、自分の彼女は撮らないというポリシーがあった。だけど、何だか今にもきえていきそうななんともいえない空気が漂う彼女を、僕はたまに勇気を出して撮った。くちぐせのように一生セックスなんてしたくないと言う彼女を。ある日、何とも言えない感情になった僕は勢いよく、どこにだす訳でもなく今のあなたの裸を撮りたいと言ってみた。予想に反して、彼女は小さくうなずいた。勢いよく写真を撮ると何とも言えない感覚だった。今まで彼女のブラジャーのひもが人目につくだけでも嫌だった僕は、何のために撮っているのだろうと。そして後日、まだ半乾きのプリントを彼女にみせた。いつも自分の裸が嫌いと言っていた彼女は、小声で、あなたがこの写真たちを名作と思ってくれたなら、私は名作と思うからどうか世に出してくださいと言った。その3日後、彼女はいなくなった。はるなちゃんというマネキンをのこして。まるで、この写真たちに朱の印を押してもらったみたいな心境になったんだ。」と記している。A4クロス装、金箔押しで、宝もののような写真集である。

佐藤航嗣公式ホームページ
https://www.kojisato.net/