森山大道写真集

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森山大道 Daido Moriyama「Kagero&Colors」パワーショベルブックス(Power Shovel Books)、2007年。

本書は1972年に芳賀書店(神田・神保町)から刊行された「蜉蝣(かげろう)」に当時未発表であったカラー図版などを加え、大判上製本としてリニューアルされて出版された。

森山さんは1938年大阪府池田町(現池田市)生まれ、日本を代表する写真家の一人である。フリーのグラフィック・デザイナーとして活動した後、1959年写真家の岩宮武二スタジオでアシスタントを務める。1961年写真家集団「VIVO」(東松照明、奈良原一高、川田喜久治など)に参加するため上京するも解散していた。その後メンバーであった細江英公の助手となり「薔薇刑」(集英社、1963年)の制作などに携わる。1964年結婚を機にフリーの写真家となり自宅近くの横須賀を撮影し写真雑誌に寄稿し始める。1967年第11回日本写真批評家協会新人賞受賞(カメラ毎日に寄稿した作品などによる)。翌年1968年グループ展日本写真批評家協会新人賞受賞記念展(銀座ニコンサロン)に出展。同年「プロヴォーク」(多木浩二、中平卓馬、高梨豊、岡田隆彦など)に2号より参加。「にっぽん劇場写真帖」(室町書房)。1970年「まずたしからしさの世界をすてろ」(田畑書店)。個展「スキャンダル」(プラザ・ディック、東京)。1971年横尾忠則と初めてニューヨークを訪問。1972年「写真よさようなら」(写真評論社)、「狩人 」(中央公論社)、「蜉蝣」(芳賀書店)、「記録」(自費出版)第5号まで。ざっと70年台まで見てもこれだけの経歴がある。これ以降のことは次回にするとして、「アレ・ブレ・ボケ」ともいわれる粒子の荒れ、激しい揺れ、画像の暈けた写真表現が特徴的であり、自身「僕は街頭スナップ写真家だから」と言う作家にとって、異色ともいえるヌード写真集である。ものの本によれば、1971年に横尾忠則と訪れたニューヨーク訪問の旅費を捻出するために引き受けた仕事だという。しかしわざわざ再販したのを見ると作家自身が気に入ってないわけでもないだろうし、そういうこともまた写真の世界にはあるのだろうと思う。ちなみに当時の撮影では緊縛指導を団鬼六が、風景写真を西村多美子(「しきしま」東京写真専門学院出版局、1973年など)が担当している。