古賀絵里子写真集

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古賀絵里子 Eriko Koga「浅草善哉」(青幻舎、2011年)」「一山」(赤々舎、2015年)「Tryadhvan(トリャドヴァン)」(赤々舎、2016年)

古賀さんは福岡生まれ、京都在住の写真家である。上智大学文学部フランス文学科卒業後、細江英公氏主宰の写真ワークショップ・コルプス第20期(2002年)に参加する。

「浅草善哉」(青幻舎、2011年)」デザイン町口景

「浅草に長く住んでいるある老夫婦の 二人だけの静かな生活を追った」作品を、ガーディアン・ガーデンが主催する「フォト・ドキュメンタリー『NIPPON』(2004年6月28日-7月3日展示)」に発表、写真家としてデビューを果たす。2003年に浅草の三社祭で出会い、それから6年の歳月をかけて撮影した夫婦の記録を一冊にまとめた。2012年フォトシティさがみはら写真新人奨励賞、2018年には「Prix Virginia Jury’s Choice」を受賞する。

「一山」(赤々舎、2015年) デザイン大西正一

「2009年夏に初めて高野山を訪れ、聖域でありながら人々が暮らす日常もあることや圧倒的な自然に強くひかれた。1200年間も信仰が続く場の持つ見えない力にも触れ、ぐっと心をつかまれた」(和歌山経済新聞)と話す。アルバイトでお金を貯めては、東京から和歌山の高野山まで毎月深夜バスで通い続けた5年間。自然やそこに住まう身近な人々をカメラで捉えた。現地の人々との交流は多くの出会いを生みやがて僧侶である夫とも巡り会う。2014年に結婚、現在は一時の母親となる。2014年日経ナショナルジオグラフィック写真優秀賞、2015年「KG+AWARD by GRAND MARBLE」グランプリ受賞。「高野山・熊野を愛する百人の会」メンバー。同じころ趣味のお酒をいかした「おんな酒場放浪記」(BS TBS、-2014年3月まで)に出演するなど多彩な経歴を持つ。

「Tryadhvan(トリャドヴァン)」(赤々舎、2016年) デザイン大西正一

サンスクリット語で三世(過去世、現在世、未来世)を表す仏教用語がタイトルである。結婚を機に京都に移住し、寺院に暮らしながら日々の生業の中での気づきや、授かった新たな命、時間の巡りや因果について、脈々と続く生命の連鎖などをモノクロ写真で伝えている。

2018年入江泰吉記念奈良写真美術館で開催された二人展「野村恵子×古賀絵里子『life Live Love』」での展示が記憶に新しいが、上記の3作品が一堂に展示されていて、非常に贅沢な空間であった。作家本人による作品紹介を聞いていると、作品が生まれ出て来た水源のようなモノゴトや、作品に昇華するまでの作家の希求の様をありありと感じることが出来て、その愛らしい声とともに今もまだ脳裏に焼き付いている。常に自身の生活と写真がともにあり、人生の転機を真っすぐに受け入れて、新たなテーマを見つけ出していく。そしてそれを成果として形づけ、結果認められるという作家はそんなにたくさんはいないと思うのである。現在最新写真集「鐘」(赤々舎 )をクラウドファンディングを経て発表予定(2020年10月頃)である。