アン・ジュン写真集

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Ahn Jun (アン・ジュン)「Self-Portrait 2008-2013」赤々舎、2018年。

アン・ジュンは韓国・ソウルを拠点に世界で活躍する写真家である。2006年ロサンゼルス・南カリフォルニア大学美術史学科卒業、2007-2009年ニューヨーク・プラット・インスティテュート写真学科在籍、2012年ニューヨーク・パーソンズ美術大学写真学科修士課程修了、2017年ソウル・弘益大学校写真学科博士課程修了。主な個展に2012年「Self-Portrait」(Anna Nova Gallery」(ロシア・サンクトペテルブルグ)、2014年「Self-Portrait」( Christophe Guye Gallery-スイス・チューリッヒ ) 2017年「UnveiledScape」 (Keumsan Gallery-韓国・ソウル)、2018年「On The Verge 」 (Photographic Center Northwest-アメリカ・シアトル)などがある。その他多くの二人展、グループ展に参加し、韓国他、イギリス、香港でも受賞歴がある。

本書は2008年から2013年にかけて、ソウル、ニューヨーク、香港などで撮影されたセルフポートレートシリーズである。高層ビルの屋上や、ビルの窓に立ち(または座り)、いわゆる危なげな場所に身を置き、1秒ごとにシャッターを切るよう設定された固定カメラの前で、パフォーマンスをする自信を撮影している。また自ら持ったカメラによって撮影された自身の体の一部(主に足)をフレームに入れ込みながら(これも高い場所から)撮影された写真が入り込んでくる。 アン・ジュンは本書について「現在とは、未来と過去の間の、とても短い一瞬のことです。つまり私たちは皆、何らかの端の上に生きているのです。生と死の間、そして理想と現実の間に。」と語っている。

時間経過を横軸に、生死を縦軸に捉えて、とりわけ不安定な場所に立つことで得られる緊張感や浮遊感、瀬戸際の感情を保ちながら、常に冷静な眼差しで自身の姿を俯瞰し、内省しながら見つめていくアンの視点に、多くの者が共感するのだろう。同時期に空中に浮かぶリンゴを捉えた「One Life」(Case Publishing、2018年)を発表するが、多くのところで本書の視座と共通するところがあるように思える。本プロジェクトは現在は進められていない、その理由は本書の中にUnder-Throw(アンダースロー、京都)で開催されたトークの中の言葉として語られるが、そういうすべての意味においてこのプロジェクトが写真集という形になって、アンの作品に対する想いとともに世に出ることは意義のあることである。