甲斐啓二郎写真集

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甲斐啓二郎 Keijiro Kai「骨の髄 / Down to the Bone」新宿書房 、2020年。

甲斐さんは1974年福岡県生まれの写真家である。1997年日本大学理工学部卒業後、2002年東京総合写真専門学校写真芸術第二学科を卒業。現在は同校の講師を務める。2012年よりTOTEM POLE GALLERYのメンバーとして活動している。スポーツという近代概念が生まれる以前の世界各地で伝統的に行われている格闘技的な祭事(喧嘩祭り)を、その只中に身を投じながら撮影し、人間の「生」についての本質的な問いに対して写真で肉薄する作品を精力的に発表している。2016年「Shrove Tuesday」「手負いの熊」「骨の髄」一連の作品で塩竈フォトフェスティバル写真賞特別賞受賞。同年写真展「手負いの熊」「骨の髄」で第28回写真の会賞を受賞している。主な個展に「Shrove Tuesday」(Shinjuku Nikon Salon・TOTEM POLE PHOTO GALLERY・東京・Osaka Nikon Salon・大阪、2013年)、「手負いの熊 / Wounded Bears」(TOTEM POLE PHOTO GALLERY・東京、2014年)、「骨の髄 / Down to the Bone」(TOTEM POLE PHOTO GALLERY・東京、2015年)、「祭事にみる人間の”生”」(おぼろ月夜の館 斑山文庫・長野 野沢温泉村、2017年)がある。グループ展に、2016年Daegu Photo Biennale(韓国)、2018年Taipei Photo(台湾)、2019年Noorderlicht International Photography Festival(オランダ)など、その他の写真集に「Shrove Tuesday」(TOTEM POLE PHOTO GALLERY、2013年)、「手負いの熊 / Wounded Bears」(TOTEM POLE PHOTO GALLERY、2016年)がある。

本書は作家がこれまで一貫して追い続けてきた格闘ともいえる身体行為=喧嘩祭りを一冊にまとめた豪華版になっている。「Shrove Tuesday」ではイングランド・アッシュボーンで撮影されたフットボールの原型になった祭りを、「骨の髄」では、秋田県美郷町で撮影された六郷のカマクラ祭りの竹うちを、「Charanga」では、ボリビア・マチャで撮影されたTinku(出会い)という祭りを、「手負いの熊」では、長野県野沢温泉村で撮影された道祖神祭りの火つけを、「Opens and Stand Up」ではジョージア・シュフティー村で撮影されたイースターサンデーに行われる「Lelo」というフットボールゲームのような祭りを伝えている。いずれも長きに渡るフィールドワークの末に完成したものであるが、表面上の荒々しい奇異な様子のみならず、その奥底にある人間の根源的な肉体的や精神的欲求や、見えないものにいざなわれる世界共通の何か(言葉以前のコミュニケーションのようなもの)が写し込まれているのではないだろうか?。