佐伯慎亮写真集

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佐伯慎亮 Shinryo Saeki「挨拶」赤々舎、2009年。「リバーサイド」赤々舎、2016年。

佐伯さんは1979年広島県神石群生まれ、現在は兵庫県の淡路島在住の写真家である。三代に渡り僧侶である真言密教のお寺の次男として生まれ、高野山高校に入学するも高2で中退する。その後大阪芸術大学写真学科に進学し、身近な人を中心にスナップやポートレイトを撮影する一方、音楽や映像など幅広い分野の可能性を追求する。在学中に写真家 野村浩司さんの勧めで応募した2001年 第23回キヤノン写真新世紀で作品「hsw!」が優秀賞となるが、自身ははじまり方をヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)に、終わり方を大橋仁さんの真似をして編集したもので受賞したのだからと悔しがった。応募の時、作品をポストに投函したままインド旅行に出てしまったため、帰国後ポストに入っていた封筒で一月遅れの受賞を知る。当時は実家を継ぐのかを迫られていたこともあり、受賞の喜びはひとしおであった。これをきっかけに写真家の道に進む決心を固めるが、やはり修行には行くことにして、大学にも復学し2003年に大阪芸大を卒業する。2002年「Futuring Power 写真新世紀10周年記念展」(東京都写真美術館/東京。CASO/大阪)で行っている。大学卒業後は、「辺ドリックス」(Over Dose/大阪/2002年)「狂気の今日昨日」(Fukugan Gallery/大阪/2003年)「嘔吐マチック」(Fukugan Gallery/大阪/2005年)と立て続けに個展を開催。2007年には写真研究者の小林美香さんとサードギャラリーの綾さんキュレーションによる韓国人と日本人の作家による「Comical&Cynical-韓国と日本の現代写真」ドーンセンター地下プール跡/大阪に出展、そこで京都の出版社赤々舎の姫野代表と出会う。それから写真集が完成するまでの3年間、試行錯誤を繰り返し、2009年待望のファースト写真集「挨拶」を刊行。同名の個展をAKAAKA/東京、FUKUGAN GALLERY/大阪で開催する。2013年 「MY BEST FRIENDS どついたるねん写真集」(Space Shower Network/共著)を刊行、同年大阪の老舗ライブハウス「Noon」の危機に際して、スチャダラパーやEgo-Wrappin’などのアーティストの声を集めたドキュメンタリー映画「Save The Club Noon」(STCN製作委員会)を製作。2017年には7年ぶり2冊目の写真集「リバーサイド」を刊行、同名の写真展を Fukugan Gallery/大阪、Kanzan gallery/東京、ギャラリー交差611/広島で開催する。2018年 平成29年度咲くやこの花賞 美術部門「写真」を受賞する。その他、個展、グループ展多数。現在はビジュアルアーツ専門学校 大阪校の講師として後進の指導に当たっている。

本書は作家のこれまでの写真家生活においての重要な足跡であり、今後も揺らぐことのない座標であることは言うまでもない。自身の思いに正直に生きて来た人間佐伯慎亮に与えられたご褒美のように燦然と光り輝いている。「見たことのない写真」「見たことのない何か」を探しながら、日々の中で出会った「かっこいいー!」一枚を今日も探し続けているのだろう。
以下のインタビュー記事をベースにしました。

VICE 若き写真家が見る歪んだ世界 vol.15 佐伯慎亮
https://www.vice.com/.../new-age-photographer-15-shinryo...
佐伯慎亮/咲くやこの花インタビューvol.15
https://ameblo.jp/sakuya-art/entry-12407606122.html