藪乃理子写真集

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藪乃理子 Noriko Yabu「水葬-Suisou」JPCO series11、桜花出版、2014年。「華葬-Kasou」「風葬-Fusou」G.I.P Tokyo、2016年。

藪さんは香川県仲多度郡生まれの写真家である。東京を中心に活動していたが、現在は香川県在住。2001年早稲田大学第二文学部に入学後、写真評論家の平木収氏の影響を受け写真を撮り始める。2004年に氏の勧めで参加した東川国際フォトフェスティバルで写真家として作品を創り続けることを決意する。2005年東京藝術大学美術部大学院 先端芸術表現科に入学。写真家の佐藤時啓さんの研究室に入り、写真だけではなく、パフォーマンスや音楽を通じて「表現とは何か」を学ぶ。2007年同校修了。その後は作品を制作し発表していく。主な個展などは、2007年「願望」 Galley Voyage。2008年「セルフポートレート」東川写真文化ギャラリー、企画展「水葬」 Gallery PUNCTUM。2009年東川国際フォトフェスティバル ストリートフォト グランプリ。2011年「華葬」香川県善通寺美術館。2012年グループ展「paradaise」渋谷ヒカリエ。2013年「水葬」新宿PENTAXフォーラム。2014年「水葬」みうらじろうギャラリー、 Nii Fine Arts、fotofever Paris 。2015年「華葬」 Nii Fine Arts、 micheko galerie (Munchen)、fotofever Paris 、G.I.P. Tokyo。2016年「華葬」みうらじろうギャラリー 東京、"elles" japonaises" (H2o project) 59 Rivoli Galerie (Paris , France)、「水葬-華葬」(KG+)ヤマモトギャラリー 京都、「水葬-華葬」香川県善通寺市美術館、「水葬」新さっぽろギャラリーがある。

本書はNPO法人JPCO「日本の写真文化を海外へプロジェクト」シリーズの11弾として制作された写真集と、その2年後にzineのような形で立て続けに出版された2冊の写真集である。自らに身体を使ったセルフポートレイト作品を制作する作家は多いが、これほど死のイメージをまとった作家はいない。水槽に張られた大量の水の中に潜った自身を撮った「水葬」、花の写真に多重露光を使って自身をコラージュした「華葬」、パフォーマンスする自身の残像を捉えたような「風葬」、いずれの写真も静かな風化、風に吹かれて砂が吹き飛ばされるように、人間が小さな物質に還元していくような死して生きる世界観を感じずにはいられない。稀有な日本の作家である。