蓮井元彦写真集

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蓮井元彦 Motohiko Hasui「Personal Matters(私事)」Bemojake,London、2013年。「for tomorrow(明日へ)」Libro Arte、2020年。

蓮井さんは1983年山形生まれ東京都出身の写真家である。父は写真家の蓮井幹生さん。2003年に渡英しCentral Saint Martins Art and Design (ロンドン藝術大学)にてファンデーションコース(単年カリキュラム)を履修した後、London College of Communication にて写真を専攻する。カメラマンのアシスタントをする傍ら、ロンドンのストリートファッション誌で撮影を手がける。2007年に帰国しフォトグラファーとして活動を開始する。「Número Tokyo」「Ginza」「装苑」「Dazed and Confused」などのファッション雑誌や広告媒体での撮影を手がけるほか、作家活動も積極的に行う。現在はW所属。

2013年に自身初となる写真集「Personal Matters」をイギリスの出版社Bemojakeより刊行。2014年には新宿のギャラリーPLACE Mで同名の個展を開催している。その他の写真集に、ヘアアーティストYUUKさんとコラボレーションし、10人のモデルや女優を撮りおろした「10FACES」(2013年)、「10FACES 02」(2014年)や、妻と訪れた金沢の記録をまとめた「Yume wo Miru」(2017年)、「Personal Matters Volume II」(2018年)などがある。またタレントの吉岡里穂を撮影した「So Long」(2018年)やモデルのモトーラ世理奈を撮った「Deep Blue 」(2018年)、2019年にはG20大阪サミットにて京都・東福寺で行われたTea Ceremonyに際し制作された図録をフィルムによる全編モノクロ写真で手がけた。

2018年「Personal MattersⅡ」の個展(QUIET NOISE arts and break)でのステートメントに「僕の『私事」があなたの『私事』を振り返るきっかけとなり、今を生きる僕とあなたの間に目には見えない繋がりが生まれることを切に願っています。」と締めくくっている。また「for tomorrow」の個展「明日へ」(QUIET NOISE arts and break)には「写真を撮る理由はとても私的なものです。しかし一枚の写真の中に写っている世界はまぎ れもなくパブリックであって、決してそれ自身では私的になりえません。それでは何が私的な写真と言えるのだろうか。 僕は撮影者とその写真の関係性によってのみ、その写真は私的になり得るのだと思いま す。そして僕は二つの対極な世界の狭間にぶらさがるように、時にはメトロノームの針のよう に行ったり来たりを繰り返すのです。」と語っている。

本書は作家における最初の写真集と最新の写真集であるが、体裁も対象も方法も何もかもが違うようだが、しかしすべての面で一貫して蓮井イズムとも言える「私」と「写真」の距離感や、「撮るもの」と「撮られるもの」のバランスが均一であって、それは始終当たり前のように貫かれている。それはまぎれもない事実であり、くつがえせない規則のようにすべての作品に反映されているようだ。