鈴木育郎写真集

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鈴木育郎 Ikuro Suzuki「解業/Gegou」赤々舎、2015年。「北上の朝」「月夜」自費出版。

鈴木さんは1985年静岡県浜松市生まれの写真家である。絵を描きバンドとバイトに明け暮れる青春時代を浜松で過ごす。21歳の時に出会った写真集「荒木経惟写真全集(3)陽子」に衝撃を受け、写真を始める。2009年ファースト写真集「北上の朝 」を「月の砂丘」名義で自費出版する。同じころ図書館で見つけた鬼海弘雄さんの写真集「PERSONA」の表紙を飾る舞踏家 吉本大輔氏に感化され、氏のもとを訪ね写真を撮り始める。2010年氏のポーランドツアーに同行、帰国後、当時母が住んでいた東京に移り、練馬区の1Kアパートで腹違いの弟と3人で同居を始める。日夜様々な仕事をし写真を撮る日々の中、東日本大震災を経験する。震災後の色を失った東京でのくらしを写した写真を写真集「月夜」(月丘舎名義)にまとめる。再び写真に光を見い出し辞めていた鳶の職に就く。中野の3LDKのマンションに住み込みで働きながら、夜には街に出て写真を撮り、やがて鳶の現場でも写真を撮らせてもらうようになる。2012年3月個展「月夜」(新宿/マチュカ・バー)、2013年6月個展「月の砂丘」(新宿/蒼穹舎)を開催。2013年キャノン写真新世紀にて「鳶・CONSTREQUIEM」でグランプリを受賞(大森 克己さん選)。2014年9月個展「月夜」(西神田/nuisance galerie)、10月に写真新世紀 東京展 2013「最果-Taste of Dragon」(東京都写真美術館 地下1F 展示室)。2015年10月写真集「解業」(赤々舎)を刊行。その他に2018年「月夜」(日版アイピーエス)があるほか、小部数ながら自費出版による写真集が多数ある。

本書は「月刊鈴木育郎」プロジェクト の第一弾として刊行された。毎月一冊刊行の一年間のプロジェクトで判型・ブックデザイナーが変わり、第二弾は四国の夏と祭りを撮った「真晶」を、第三弾は東京都写真美術館での展示をベースとしたスナップ写真「最果」を。第四弾は「月夜」、第五弾は浜松で撮影された風景「桑樹」と続き、それ以降のテーマもすでにあったようだ。また写真集の刊行と合わせて、恵比寿のNADiff a/p/a/r/tで「今月の鈴木育郎」展を開催する予定であった。しかしそれは行われなかった。

ちなみに「鳶・CONSTREQUIEM」で、2013年キャノン写真新世紀でグランプリを受賞するまでの間に製作された自費出版の写真集のタイトルだけを見ると「北上の朝」「Feel gold」「Modern love」「五月雨後晴れ2011」「アジサイブルー」「終夏」「バッコーン」「mio」「夢路」「続夢路」「Yellow grow」「淘汰」「五月雨後晴れ1012」「九月」「写真・舞踏」「桑樹」「風去」「Polish bays」「余銀」「久撫」「白魔」「月夜 初期2012」「月夜 .第22013」「直会」「キミ、空」「赤縛深紅(カラー盤、モノクロ盤)」「流景」「色景」「最果」「蘇襲」(作家覚え)だということである。そのいくつかは現在代々木八幡のSoBooksで手に取ることができる。