真鍋奈央写真集

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真鍋奈央 Nao Manabe「波を綴る/Through the Waves」入江泰吉記念写真賞実行委員会、2019年。

真鍋さんは徳島県三好市出身、現在は東京で活躍する写真家である。中学卒業後、単身渡米しニューヨーク州とハワイ州の高校で2年間を過ごす。卒業後、2006年に帰国しビジュアルアーツ専門学校大阪 写真学科に入学。同校卒業後も研究生制度を利用し一年間作品制作に励む。また2019年までの3年間は同校で講師を務めた。2011年Place M(新宿)のグループ展で「Malamalama」を発表。2012年第6回写真「1_WALL」に応募した「眼を開けて夢を見る」でファイナリストとなり、ガーディアンガーデン(銀座)で展示を行う。2018年「波を綴る」で第三回入江泰吉記念写真賞を受賞。2019年2月にはファースト写真集「波を綴る」を刊行するとともに、受賞展を入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催した。同年4月Case Tokyo(渋谷)、8月Paddlers Coffee(渋谷)、10月コミュニケーションギャラリーふげん社にて同名の個展を開催している。その他写真集「地平12号」(Case Publishing、2019年)にも参加している。入江泰吉記念賞は、奈良市が2年に1度開催している写真賞で、写真文化の発信と新たな写真家の発掘を目的とし、奈良の新たな魅力の発見につなげることをめざしている。受賞作品の写真集を製作し写真家を支援、未来そして世界に向けて発信している。

本書は作家が十代の頃より10年以上通い続けて捉えた、ハワイ独特の豊かな風景と生み出される風土、そしてそこに暮らす様々な人々との出会いと交流、暮らしを綴った記録であり、やがて知ることになった歴史的な側面をも伝えている。それは「観光では出会うことのないパーソナルな手触りのハワイの空気(京都 恵文社一乗寺店 真鍋奈央写真集『波を綴る』オリジナルプリント展 スタッフブログより」をよく伝えている。

厳重にしまわれたダイヤリーを開けるように外箱を開くと、上品な手触りの紙に、これもマウントされたプリントのようなデザインが特徴的で、molokai、oahu、big island、mauiと4つの島ごとに写真はまとめられ、ミシン綴じされ、4冊で一冊となるよう造本されている(受賞展と同じ構成である)。2019年10月にふげん社で開催された個展のステートメントの中にこう記している。「写真集制作が終わって数ヶ月の今もまだ、出来上がった写真集のページをめくる度にもう会えなくなった人たちが生きていた時間に思いを馳せるとともに、現在も生きて島で生活する彼ら彼女らの日常を想像します。変化、あるいは変質していく日常は、海上で跡を残さずに生まれては消えていく波の様だと感じています。」同展では写真集の箱書きをしている写真家の川島小鳥さんとの対談が実現している。